(写真・神奈川新聞社)
入所者ら46人が殺傷された障害者施設「津久井やまゆり園」(相模原市緑区)の事件後、園周辺の住民から50件を超す精神面の相談が市に寄せられていることが分かった。「事件があってから、心や体の調子が悪い」といった悩みが相次いでおり、市がケアに当たっている。26日で事件発生から5カ月、被害者や家族、施設関係者以外の多くの人たちも、心に深い傷を負っていることが浮き彫りになった。
市精神保健福祉センターによると、事件があった7月26日以降、市「こころのケア」窓口に寄せられた事件関連の相談は54件(11月30日現在)。「報道を見るのがつらい、不安」「自分にも障害があるが、同じような考えを持った人が事件を起こさないだろうか」といった相談が多いという。
センターは事件翌日から市内7カ所の相談窓口をインターネットなどで周知。8月上旬にはチラシを作製し、自治会を通して地元の相模湖地区(2,489世帯が加盟)で回覧した。園がある千木良地区(相模湖地区の一部)では、11月末にも同様の回覧で伝えた。
センターは「事件の大きさを考えれば、影響を受けた人も多いと思う。相談だけでなく支援機関につなぐなど、できることを続けていく」としている。こころの相談の窓口は、同センター・電話042(769)9818など。
■「日常生活大切に」
「4カ月以上たった今も受け止められない。眠れない日々がしばらく続いた」。津久井やまゆり園の近くに住む女性は、涙声で打ち明けた。地域住民として入所者と交流を深めただけでなく、園で勤務した経験もあるといい、「一緒に生きてきた方が犠牲になって、本当にショックで悔しくて」とうつむいた。
11月末、千木良地区で開かれた地域住民の集い。ほかの参加者からも「施設の行事などに参加して親しんでいたのに、お別れ会などの機会もなく、いまだに気持ちの整理がつかない」との声が上がった。
国立精神・神経医療研究センターによると、過去にも和歌山のカレー毒物混入事件(1998年)、大阪教育大学付属池田小学校の児童殺傷事件(2001年)などで、地域住民を含む関係者の心のケアが課題となった。
同センター成人精神保健研究部の金吉晴部長は「親しい人が不慮の死を遂げることは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)が生じ得る出来事として米国の診断基準でも認められている。ケースによって異なるが、被害者との関係性などによっては、心のケアが必要となる可能性も考えられる」と指摘する。
大半は数カ月で自然に回復するが、悪夢やフラッシュバック、気持ちの落ち込みなどが半年以上続く場合は、医療機関など専門家に相談する必要があるとし、こう呼び掛ける。
「本人は、まずは日常生活をしっかり送ることが大切。周りの人も無理に悩みを聞き出そうとせず、日々の生活でちょっとした支援を心掛けてほしい」