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(写真・琉球新報社)

小雨降りしきる6月某日、周囲の目を気にしながら記者はコザ琉映館へ足を運んだ。赤いペンキが塗られた壁面は、所々コンクリートがむき出しになっていて、年季を感じさせる。

 

静まりかえる劇場入り口には、本当に成人映画館か疑いたくなるほど快活なおばちゃんが、もぎりをしていた。「あいっ、あんた記者ね? もう最後だから、ゆっくり見ていったらいいさ」

 

扉を開けると、ほこりとたばこの残り香が交じり、独特の雰囲気。通された客席は真っ暗で、足元が見えない。クーラーはあまり効かず、大型扇風機2台が回り、映画の音をかき消す。

 

隣の客と十分な距離を保ち観賞する客の姿が、暗闇にうっすら見える。スクリーンには裸体の女性が映っている。コメディータッチの内容に、思わずツッコミを入れたくなるのを我慢。たまに映像に映りこむ黒丸や映像と音のほんのわずかなズレなどが、フィルムならではの味わいを醸し出している。

 

トイレに立つと、ペーパーがない。もぎりのおばちゃんに問うと「トイレにペーパーを置いてたら、そこら中ペーパーだらけよ。はっはっは」と笑い飛ばす。

 

2階の映写室では2台の映写機を交互に使い、フィルム技師が慣れた手つきでフィルムをセットする。「映写機の修理師も県内にはもういない」と使い古された取扱説明書を出す。表紙の裏には「1953年」と手書きがある。故障したらどうするのか聞くと「県外から技師を派遣してもらうよ」と説明書をめくる。

 

「昔はね、ここも邦画とか任侠(にんきょう)物とかやっていたんだけどね。大型映画館とかできてからは、難しいかな」と複雑な表情を浮かべる。50年余りここで回り続けた映画フィルム。「時代の流れだから、仕方ないよ」と、寂しそうに技師はフィルムに手を掛けた。(上江洲真梨子)

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