私たちは普通の家族、悩みや葛藤は誰もが抱えていてそれを乗り越えると誰にもGIFTは届く
画像を見る 改めて愛息の首に金メダルをかけて。「この子が生まれてくるってことが、すごい力になったと思います」(羽賀さん・撮影:須藤明子)

 

■「お酒飲んで、夫婦喧嘩して、子育ても…悩みは同じ。私たち、普通の家族です」

 

「子育ての苦労? それは当たり前にいろいろありますけど、一般的なご家庭と大差ないというか。だって、うちのパパ、ワンオペできますよ。私が泊まりの仕事のときとか、1人で息子を任せてます」

 

朗らかに笑う久下さんの隣で、羽賀さんは頭をかいていた。

 

「ギリギリですよ。子どもの爪切りとか、いまもできないことがありますし。僕、握力ゼロなんで、最初はオムツ交換も難しかった」

 

それでもリハビリのとき同様、夫は一つひとつクリア。その努力を誰よりも知る妻は、胸を張る。

 

「難しかったオムツ交換も、洗濯バサミなど道具を使ってできるように。お風呂だってパパが息子を膝に乗っけて一緒に入ってくれる。保育園の送迎だって、車いすで膝に乗せて行ってくれるんです」

 

そして、久下さんは少し力を込めて、こう続けた。

 

「かつて、障がいのある人と接した経験のなかった私が、最初に池選手を取材したとき、彼が恋愛して結婚し、お子さんをもうけたと聞いて正直、驚きました。そして同時に、気づいたんです。

 

障がいがあるというだけで、じつは皆さん、普通なんだって。その思いは夫と結婚したいま、さらに強くなりました。

 

普通にお酒飲んで、夫婦喧嘩もして、もしかしたら方法は普通じゃないかもしれないけど、子育ても。私たち、普通の家族です。いまはそのことを、あのころの私のように障がいのある人との接点がない一人でも多くの人に、伝えていけたらと思っています」

 

ドラマは、車いすの選手たちはもちろん、それ以外の健常者のキャラクターたちが抱える葛藤や悩みも描く。そう、生きていくうえでの困難を抱えていることに、違いなどないのかもしれない。そして、障がい者も健常者も分け隔てなく、それを乗り越えた人にはきっと、GIFTが届くのだ。

 

初夏の街で、眩しそうに息子を見つめる2人。そこにあったのは、どこにでもいる父母の、愛情溢れるまなざしだった。

 

(取材・文:仲本剛)

 

【後編】これなら思いきりぶつけられる……車いすがくれたものとは?いろいろな活動ができ、世界が広がり、優しい人間になれたへ続く

 

画像ページ >【写真あり】2021年9月に結婚した2人。久下さんのSNSには数えきれないほど多くの祝福のコメントが寄せられた(他2枚)

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