「昨年結婚した夫はひと回り年上。姑も高齢なので、じきに介護が必要になるのは明白です。三世代同居なんて、子どもの面倒をみてもらうどころか、私が“世話”しなければいけない人が増えるだけ。かえって仕事なんてできなくなりそう!」(アパレル会社勤務Aさん・29)
「嫁が体調を崩し、孫の面倒をみるために2週間同居しましたが、嫁としつけ法を巡って毎日バトル。今さら一緒に暮らすなんて無理ですよ」(専業主婦Bさん・64)
さる11月26日、政府は一億総活躍社会への具体策を検討する「一億総活躍国民会議※1」を首相官邸で開き、緊急対策を決定。「希望出生率1.8」「介護離職ゼロ」などの達成にむけ、保育と介護の受け皿を各50万人分に増やすことが、対策の柱となった。
しかしそのいっぽうで「子育てを家族で支え合える三世代同居・近居がしやすい環境づくり」なる項目も対策には盛り込まれ、三世代同居に向けた住宅建設や、UR賃貸住宅を活用した親子の近居などを支援するという。
この「三世代同居支援」は以前から安倍政権が掲げている政策のひとつ。親に子どもをみてもらう環境をつくり、働く女性が子どもを産みやすくするための施策だが、「育児の人手不足は家庭内で解決しろ」というもくろみが垣間見える。さらにその先には、「子どもをみてもらったんだから、親の介護も家でやれ」という思惑さえも見え隠れ。子育てや介護を社会全体の問題ととらえず、家庭内の問題にする。まさに時代に逆行した施策!
一億総活躍国民会議の民間議員で少子化ジャーナリストの白河桃子さんは次のように語る。
「三世代同居自体に利点はありますが、家族の絆を強調するような提言では『育児も介護も家族に押し付けるのか!』と取られるかもしれない。この案が出たときに、批判が起こるのではないかと、私も心配していたんです」
果たしてその懸念は的中し、世の女性たちから大ブーイング!SNS上でも日々、既婚・未婚を問わず、働く女性たちからの反対意見が投稿&拡散されまくっている。
また、すでに親を亡くしていたり、実家が遠方だったりと、親を頼れない人たちには何のメリットもないこの政策。支援からこぼれる人ができ、新たな格差まで生じかねない。
「だからこそ、親を頼れない都会のキャリアウーマンであれ、ひとり親であれ、どんな形でも子どもを持っても大丈夫、という空気をつくることが、私は少子化対策にはいちばん大切だと思っています」(白河さん)
「絆」の語源である「くびき」は、犠牲を伴う関係性や束縛を指す。家族の絆を強調する施策では、犠牲ばかりが生まれるのでは?「一億総活躍」どころか、「働く女性総犠牲」にしないでくださいね……。
※1.一億総活躍国民会議=少子高齢化に真正面から挑み、「希望を生み出す強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」の「新・三本の矢」の実現を目的とする「一億総活躍社会」に向けたプランの策定等に係る審議に資するため、設置されたもの(首相官邸ホームページより抜粋)。