「いまどき回覧板とか、面倒なだけ!」という声も多い町内会。東京都内では、町内会(自治会)の数は増えているものの、逆に加入率は激減しているという。つまりマンションが増え、自治会が細分化しているが、若い世代を中心に加入者が減っているのだ。「町内会不要論」も唱えられているいま、町内会のこれからについて識者に聞いた。
「現実に、回覧板の受け渡しも難しくなっていることからもわかるように、個人個人の生活リズムやスタイルの違いは大きくなってきています。従来どおりの方法では、町内会の存在そのものがトラブルの原因にもなりかねません」
こう語るのは、家族・教育問題などを中心に取材を続けているジャーナリストの石川結貴さん(54)。いままでのスタイルではもう限界の町内会。それは、地域社会学を専門に研究している首都大学東京の玉野和志教授も同じ意見だ。
「かつては全戸加入の組織だった自治会も、いまでは加入率が50%を下回る組織もあります。さらに加入者の高齢化も進み、役員のなり手も減ってきています。かといって町内会は“いざ”というときに必要なものです。よく言われるのは災害時ですが、ほかにもたとえば近所に迷惑施設の建設計画が持ち上がったとき、住民の意見を申し入れるためには、町内会があればスムーズです。町内会が急速に弱体化するなか、いま必要なのは、町内会の仕事をそぎ落としていくことなのです」(玉野教授)
『“町内会”は義務ですか?』著者で評論家の紙屋高雪さんは、団地自治会の会長を務めていた際、上部組織とされる自治会連合会などの仕事に忙殺され、やむなく会長を辞任した。
「私の後任も見つからず、団地自治会は休会することになりました。ところがそのうち、『自治会はなくてもいいが、団地の夏祭りだけはできないか』という声が住民たちから上がり、私たちは新しい自治会を結成することにしたのです。活動はほぼ夏祭りだけですから、会費ゼロ、加入も不要、義務もナシの、完全ボランティア運営という、ゆるい自治会です。これからの町内会は、私たちのように、やりたい人がボランティアとして担うというタイプのものへ移行していかざるをえないと思います」(紙屋さん)