「日本で作られているお米は、正式に品種登録されているもので800種類以上。実際に作られているものに限っても、400種類を超えるほど多岐にわたっているんです」
そう話すのは、お米のスペシャリスト・“5ツ星お米マイスター”の澁谷梨絵さん。これまで食べてきたお米は300種類以上。炊飯実験を繰り返し、お米の味を最大限引き出す方法を研究してきた。
「お米の質は、品種改良や精米技術で恐るべき進化を遂げています。それにお米も繊細になってきているので、炊き方や保存方法も、“昔の常識は今の非常識”になっています」
ここ数年、毎年のように大手メーカーから、スチームや圧力機能などを搭載した高級炊飯器がどんどん発売されている。しかしそんな今だからこそ、「炊飯器を買い換える前に知ってほしい」と澁谷さんがお米の新常識を教えてくれた。
【1】保存は冷蔵庫の野菜室で!
お米の保管場所は“暗くて、通気性がよく、涼しいところ”が一般的だが……。
「温暖化の影響で、室温はひと昔前と比べて5度以上高くなっています。22度以上の環境では虫がわきやすく、これまでのような常温保存は難しくなっています。家の中で湿度も温度も安定しているのは、ずばり冷蔵庫。野菜室に入れるのが正解です」
【2】「新米は水を少なめ」はNG
おいしいご飯を炊くには、お米と水の分量の正確さが大前提。計量するとき、炊飯器の目盛りではダメだという。
「上から見た目盛りと、実際の分量との間に大さじ1杯分の誤差が出てしまうんです。水加減を指や腕を使って、目分量で量るのもNGです。お米を量るときのように、計量用のカップを使いましょう」
お米の状態や時期によって水の量を調整する必要はない、と澁谷さんは続ける。
「お米の水分量は新米も古米も15%程度と決められて出荷されています。新米だからといって、水分量はほとんど変わりません。『新米は水分量が多いから、水の量を気持ち少なめで炊くといい』と言っていたのは昔の話です」
【3】お米はとがずに“洗う”
おいしく炊くには、しっかりとお米をといで、米ぬかを洗い流すのが大事だと教わった人も多いはず。
「力を込めてといではいけません。水の中で米を泳がせるように“洗う”だけ。3〜4回水を替えて繰り返し、さっと流すだけで大丈夫。精米技術が発達したことで、最近のお米に米ぬかはほとんど残っていません。お米同士をすり合わせてといでしまうと、昔よりもお米が繊細になっている分、お米が割れたり、大切な栄養分を取り除いてしまいます」
【4】炊きあがったら炊飯器の電源オフ!
炊飯器についている保温機能。ホカホカの状態が続く便利機能……だと思ったら大間違い、と澁谷さんは指摘。
「ピッと炊き上がりの合図が鳴ったら、フタを開ける前に一度電源を切るか、取り消しボタンを押してください。保温機能に移行してしまうと、湯気が保温に使われてしまい、蒸らし効果が少なくなってしまうんです。保温機能を使わないことでおいしい湯気がご飯に戻り、芯からふっくらと立ち上がります」
保温をするなら、15分蒸らした後にしよう。
【5】冷凍する場合は、冷まさずアツアツのまま
余ったご飯は、ラップに包んで冷凍保存している人も多いだろう。
「お米を炊くと、生米状態のベータ状態から、もちもちのアルファ状態になります。ただ、炊いたご飯でも時間がたつとベータ状態に戻ろうとして、味がどんどん劣化します。おいしさを保つには、アルファ状態のまま保存する必要があるんです」
それには、炊き上がってすぐにラップで包んだ後、さらにアルミホイルで包むこと。アルミホイルの遮熱性で、まわりの食材を傷めず、瞬間冷凍が可能に。空気に触れることもないので、冷凍後は1年ももつという。
朝、昼、晩ご飯……どの食事でも食卓に並ぶお米。どうせ食べるなら、おいしく炊きたいものだ。