日本人女性の平均寿命が87.05歳なのに対して、健康寿命は75.56歳。これは、死ぬまでの約12年間は何かしら日常生活に制限があるということ。すると、どうしても気になるのが介護のお金。
「たとえば『50歳で加入し、月々約4,000円の保険料を支払えば、将来に介護認定された段階で一時金500万円が支払われる』というような介護保険商品が、各保険会社で売り出されています」
そう話すのは、ファイナンシャルプランナーの加藤梨里さん。だが、加藤さんは介護においては“公的サービスをベースに考えるべき”という。
「公的な介護サービスは、一定額までなら自己負担1割(年収によっては2割)で利用できます。たとえば在宅サービスについては、1カ月あたり、要介護1なら約16.7万円、要介護3なら約27万円分までが上限です」
また、’15年の生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」によると、介護期間が10年以上と長期化するケースが全体の16%ほどあったが、平均値は約4年11ヶ月だった。生活経済ジャーナリストの柏木理佳さんは次のように語る。
「ずっと民間の介護保険料を支払い続けるよりも、その分を貯蓄するという考え方も“あり”でしょう」
民間介護保険で一時金が支給される要介護・要支援の認定年齢も知っておきたい情報だ。厚生労働省の介護給付費実態調査月報によると、65〜69歳では、何らかの認定を受ける人は、全体のわずか3.0%にとどまっている。年代が上がると徐々に認定率は上がっていくものの、80〜84歳でも認定率は29.9%、85歳以上で60.3%だ。
「80歳を超えても3人に2人が、85歳を超えても4割が認定を受けていない。ということは、介護保険の保険金を受け取れない人が多いという計算になります」(柏木さん)
さらに、国の公的介護保険と、民間の保険会社の介護保険では認定基準が必ずしも同じではないことにも要注意だ。
「国の介護認定は、要支援1〜2、要介護1〜5までの7段階ですが、保険会社によっては、3〜7段階などの独自の判定基準を設けています。国の判定で要介護3だったのに、保険会社の判断はそれよりも軽い認定結果になってしまうというケースも考えられます」(柏木さん)
また、ネットで申し込みできないケースが多いのが介護保険の特徴でもある。
「そのため、外交員によるセールストークでつい乗せられてしまうこともあるといいますが、正直、絶対にはいらなければならない保険とはいえません」(加藤さん)
しかし、柏木さんが検討する価値があるというのは、昨年から売り出され、40代、50代を中心に大ヒットしている認知症保険。
「認知症の場合、食事もできるし体は健康体のため、要介護度数も低い。ところが徘徊をしたり、排せつに手間がかかり、24時間態勢で介護する必要があります。結果、介護費用も限度額を超えて、自己負担費用がかさむことに。そんなときの“安心”につながる商品ともいえます」(柏木さん)
現在のところ、2社から売り出されているが、今後は各社増やしていくことが予想されるという。
「代表的な会社の商品で、50歳女性で3,000円ほどの月額保険料です。認知症と診断された段階で一時金300万円が受け取れます。ただし、認知症にならなければ“掛け捨て”になります」(柏木さん)
’25年には65歳以上で5人に1人が発症するといわれている認知症を、どうとらえるか−−。それが、保険見直しのカギになってくるのかもしれない。