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■地図ナシで辿り着ける欧米  地図がないとダメな日本

 

タクシーに乗って行先の住所を告げ、乗客からの道案内なしに目的地に到着した経験が、どのくらいあるだろうか?多くの方が道案内役をした経験があるのはないか。

 

これは別にタクシーの運転手さん側に問題があるわけはなく、日本の住居表示の問題なのだと専門家は指摘する。

 

「欧米のストリート方式の住所(住居表示)は分かりやすい。名前の付いた道路があり、都心を起点に例えば左が奇数、右が偶数で、番地が順に並んでいれば、訪問先までの距離や方向が把握しやすいですよね。ところが日本の住居表示はそうではありません。特に番地の並び順など、分かりにくいことが多いのです」

 

そう解説してくれるのは地図や地名の研究家で、著書に『番地の謎』(光文社知恵の森文庫)などがある今尾恵介氏だ。

 

■自治体によって並び順の違う“番地”

 

確かに実際に街を歩いてみれば、次々と出てくる番地プレートの数字の並び順はランダムで分かりにくくも見える。

 

「話は昭和30年代にさかのぼります。現在一般的に行われている住居表示は住居表示法に基づくもので、これは当時、各方面の英知を結集して実施されたものでした。恐らく担当の都市計画担当者は意気込んで作業したのでしょうが、机上の地図を見ながらの作業はどうしても鳥瞰図的な見方になってしまう。地図を眺めながら道路に沿って線を引き、町名を統廃合して機械的に番号を付けた結果、実際に歩いてみると分かりづらい住所になってしまったのでしょう。しかも番地の並び順は自治体ごとに違うので、より分かりづらくなっています」

 

■独自の方式を貫いた京都

 

一方で分かりやすい住所も日本には存在する。

 

「住居表示法とは違う、昔ながらの住所を用いている自治体もあります。これは土地の人たちの実際の感覚から生まれた住所で、分かりやすい。例えば京都や北海道。古くから東西と南北の“通り名”を組み合わせた方式で住所を示すので分かりやすいです。特に北海道は算用数字を用いて略称を使うのが面白く、例えば北8条西5丁目の交差点は『北8西5』とプレートが立ち、英語表記も『North8 West5』と、ある意味で潔いですよね」

 

ちなみに今尾氏いわく、自治体ごとの番地の並び方のルールを知るためにはその自治体の「住居表示実施基準」を閲覧するか、市街図を凝視して法則を導き出すしか方法がないという。今尾氏は実際に番地の並び順を解明すべく地図を紐解いたことがあり、それらの苦労と研究の結果は近著『番地の謎』に収録されている。興味のある方、一度チャレンジされてみては?

 

【著者プロフィール】

今尾恵介:1959年、横浜市生まれ。音楽出版社勤務を経て、フリーハンド地図制作者およびフリーライターとして独立。イラストマップ作成や地図・鉄道関連の著作に携わる。現在、(一財)日本地図センター客員研究員、(一財)地図情報センター評議員、日本地図学会評議員。著書多数。

 

 

新刊案内:『番地の謎』

 

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住所のしんがりに来る番地。そもそも番地とは何だろう。どこを起点にどんな順番で並んでいるのか? 日本の住所表記は大きく3類型に分けられるが、京都・北海道など独自の表示方法を持つ自治体があるのはなぜなのか? 個性的な住所を細かく詮索しつつ「住所の仕組み」の奥深さを味わう一冊。

 

価格:820円+税

出版社:光文社(知恵の森文庫)

http://amzn.asia/4TTmSeN

 

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