故郷や応援したい地方に寄付ができるふるさと納税は、実質自己負担2,000円で税金対策になり、返礼品をもらえるとあって活用しないと損! とはいえ、’17年4月に総務省が豪華な返礼品を控えるよう“お達し”を出したことで、返礼品の還元率が寄付額の3割以下に制限され、パソコンや自転車などの高額商品、金銭類似性が高い商品券やプリペイドカードなどがNGに。
「確かに一部で変更はありましたが、より使いやすく、魅力は依然高まっています。昨年4月から大きく変わったのは、自治体側が税金の使い道をより明確にするようになったこと。返礼品もこれまでのようにお得感だけでなく、地域の魅力をアピールするものを増やしたり、寄付者目線になっていたりするんです」
そう教えてくれたのは、日本最大級のふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」を企画運営するトラストバンクの宗形深さんと田中絵里香さん。’08年4月にふるさと納税がスタートして、ちょうど10年。返礼品の特徴も大きく変化しているという。
「ふるさと納税のいいところは、寄付金として納める税金の使い道を、自分の意思で決められることです。これまでも“子育て支援”や“高齢者ケア”“環境保全”などの項目から選べたのですが、最近、さらにパワーアップして、具体的なプロジェクトへの寄付を募る『ガバメントクラウドファンディング』を実施する自治体が急増しています」(田中さん)
ガバメントクラウドファンディングとは、地域の問題を解決するために自治体がプロジェクトを立ち上げ、賛同する人から寄付を募るもの。使い道が具体的かつ明確になっているため、寄付するお金が何に使われるかを知りたい人の関心を集めている。
たとえば、貧困家庭の子どもに食料を届けるプロジェクトを立ち上げた佐賀県では、寄付者は返礼品を受け取る代わりに、子どもたちに直接、寄付ができるのだ。このようにふるさと納税のシステムを利用して寄付を募るプロジェクトを、さまざまな自治体が採用し始めている。
■佐賀県「さが・こども未来応援プロジェクト」
貧困や困難を抱える子どもたちを救済するプロジェクト。「子どもの居場所に食材をプレゼントコース」(1万円)を選べば、佐賀県産のお米やお肉を返礼品として受け取る代わりに、子どもたちへ提供することができる。
■千葉県館山市「『沖ノ島』復興プロジェクト」
昨年10月の台風21号で多くの被害を受けた沖ノ島。20種類以上のサンゴが生息するなど豊かな自然が残っているが、遊歩道の決壊や大量の漂流ゴミで、現在は立ち入り禁止に。1万円以上の寄付で館山の花やスイーツセットが返礼品に。
■愛媛県松山市「小説『坊ちゃん』の舞台 道後温泉本館を未来に遺したい!」
国の重要文化財に指定されている道後温泉本館。寄付金は、築123年で老朽化している施設の修理や、近い将来予測されている南海トラフ地震への備えに使われる。1万円以上の寄付で優待券や松山市内で使えるクーポンなどが返礼品に。
■新潟県新発田市「パラアスリートを夢の舞台へ!次に夢を実現したい障がい者を応援!」
障がい者スポーツ支援プロジェクト。集められた寄付金は本番に使用する用具一式の購入やメンテナンス費用、国際大会遠征費用、障がい者スポーツ発展のために活用される。1万円以上の寄付で「月岡温泉旅館感謝券」などが返礼品に。
■山梨県身延町「しだれ桜の里づくり事業」
身延高校の生徒が町長に「身延町をしだれ桜の里にしたい」と提案したのがきっかけ。3万円または5万円以上の寄付で、住所や名前入りの「プレート」設置、町内施設の無料優待や割引特典のある「里人の証」(有効期限5年間)が返礼品に。
前出の宗形さんは、ガバメントクラウドファンディングについてこう語る。
「’17年には66件のプロジェクトが立ち上がり、これまでに26億円以上の寄付が集まりました。今年は100件を超える見込みです。税金の使い道を指定して応援できることが、ふるさと納税の魅力になってきていますね」(宗形さん)