被災者が漁網を使いひとつひとつ手編みする、被災地復興支援の「浜のミサンガ
環」。6月11日にインターネットで正式販売をした途端、注文が殺到し数分でサーバーがダウン。一時は製造が追いつかないほどだったという。
ミサンガ作りを統括する「三陸に仕事を!プロジェクト」の雫石喜隆さん(54)は、こう語る。
「(岩手県)三陸町の浜にあった牡蠣の番屋で、息子の仕事を手伝う『浜のおかあさん』と呼ばれていた人がいるんです。それが震災で、家も船も牡蠣の養殖棚も根こそぎ流されてしまった。ところが彼女は避難所で、震災の翌日からみんなのご飯を作っていたんです。
それを見て、この人は働いていないとダメなんだと」
だが、人一倍働き者だった浜の女たちには、するべき仕事がなかった。
「人には、役割が必要なんです。避難所で気力なく寝たきりになっているほかのおばあちゃんたちを見て、何か仕事をしてもらわないといけないと、改めて思いました」
動きは県外まで広がり、東北全体で280人以上の人が編んでいるというこのミサンガ。太・細の2セットで税込み1,100円。このうち750円が、作り手および生産管理者など、プロジェクトを支援する地元被災者の手に直接入る。
「いずれはミサンガを卒業して、本来の仕事に就いてほしいが、まだ時間はかかります。それまで一本でも多く、手ひどく被災したものの、いち早く仕事に向き合った女性たちを支援したいと思ってくださる方の手に『環』を届けられたらと思っています」