昨年、「ねこの推定飼育数がついに犬を超えた」と日本ペットフード協会が発表し、ねこブームを裏付ける画期的なニュースとして話題を呼んだ。
そこで先日、発売になったばかりの特別ムック『ねこ自身グルーミング』(光文社・694円+税)取材班が“空前のねこ人気”に関する調査を開始。世界にはびこりつつある「ねこ依存症」の実態を明らかにする!
「ねこがもてはやされるのは平和でいい時代の表れです。群れで暮らしていた犬とは違って上下関係がなく、欲もない。その辺もウケている理由かもしれませんね」
そう、ねこブームを分析するのは、動物学者で「ねこの博物館」館長も務めた今泉忠明氏。順位があり、命令系統がはっきりしている犬に対し、ねこは飼い主を中心に、同心円上で行動しているのだとか。ただし時間的な順位だけはあるそうだ。
たとえば、いちばんいい場所に強いねこがいたとして、水を飲みに行った際に別のねこにその場を奪われたとしても争いにはならないという。
「席を外している間に部長の席に平社員が座っていたら、普通は怒られちゃいますよね(笑)。でも、ねこ社会は早い者勝ちで、譲るのは平気なんです。そういうときは転位行動で気を紛らわせたりしています」(今泉さん・以下同)
転位行動とは、照れ隠しやイライラを解消するために、あくびをしたり爪を研いだり毛づくろいしたりすること。人が恥ずかしいとき頭をかいたり、緊張するとビンボーゆすりをするようなものだそう。
人間がねこに引かれるのには生物的な理由もあるそうだ。サルから進化した人間はスキンシップを大切にする生き物で、丸くてフワフワした外見や、赤ちゃんのように幼く、守るべき対象に“かわいい”と感じる傾向があるそう。
「ねこの祖先だったヤマネコの大人はほとんど鳴きませんが、ねこは大人になってもよく鳴きます。体が成長しても子どもの気分が抜けない幼児化=ネオテニーと呼ばれる現象で、その性質も人間には魅力あのでしょうね」
愛らしい外見と幼さを残した個性的な性格で人間を手玉に取るねこたちが、世界を操ることなどたやすいのでは!? そんな突拍子もない疑問を今泉さんに投げかけてみると……。
「ねこが帝国の主になったら大変なことになるでしょうね。なにしろ気分が変わりやすく、同じことをするのが性に合わなくて5秒と続かない。気分がいいときはいいけど、急にやーめた! と全部放り出すんじゃないですか(笑)」
ねこに心を支配された人間が対抗できることは、ねこの上をいくしかない。癒されているようではダメ。逆に癒してあげるようにならなければ、ねこ依存症から抜け出す手立てはないようだ。