(写真:アフロ)
昨年、「ねこの推定飼育数がついに犬を超えた」と日本ペットフード協会が発表し、ねこブームを裏付ける画期的なニュースとして話題を呼んだ。
そこで先日、発売になったばかりの特別ムック『ねこ自身グルーミング』(光文社・694円+税)取材班が“空前のねこ人気”に関する調査を開始。その裏で進行する「ねこがもくろく世界征服計画」という恐るべき実態を明らかにする!
たしかに、ねこに対する注目度は高まる一方だが、実は昔から犬と同じくらいたくさんのねこが飼われていたという説も。というのは、日本には狂犬病予防法があり、犬の登録は義務付けられているが、ねこには登録義務がないため数字に表れなかったのだ。
人間がねこに魅了されてきたのは今に始まったことではないようだが、最近ではねこ好きのレベルを超え、完全に心を支配された「ねこ依存者」たちがちまたにあふれているという。しかも、日本だけの話ではない。地球上のさまざまな場所にねこたちは忍び足で侵入し、“人たらし”の特技で世界の人々をメロメロにしている事実が明らかにされているのだ。
ねこはなぜこれほど人を魅了するのか。
この謎を解くために、動物学者で「ねこの博物館」館長も務めた今泉忠明氏にねこの習性や人との関わりについて伺った。
「そもそも、ねこの祖先だったヤマネコがどうやって人に近づき、家畜化されていったかというと、理由はネズミなんです。豊かになると作物を狙う害獣が増え、それを目当てにねこがやって来るわけです。ネズミを退治するねこは歓迎され、人と共生するようになったのです」(今泉さん)
ネズミ捕りの能力は現在も発揮され、イギリスには“ネズミ捕獲長”を命じられたねこが首相官邸内をパトロールしている。また、ロシアのエルミタージュ美術館の地下では60匹以上のねこが貴重な美術品をネズミから守っているという。
ねこが人間に飼われはじめて約1万年だそうだが、狩りの名人から精神的な癒しの存在へと役割も変化している。
かつてロシア正教会の司祭たちが愛猫を抱いてうっとりとほほ笑むカレンダーが話題となったが、厳格な司祭が家ではねこに癒されていると想像するだけで親しみが湧く。また、パリやNYでは看板ねこがいることで評判のホテルも。ロビーで堂々と居眠りをするし、愛きょうも振りまかないが、ゲストたちをとりこにする癒しのスキルは高い。
「平和な時代には個人や個性を重んじるので、単独で行動するねこと気質が合っているのでしょう」(今泉さん)