「半年前にインターネットでホームページを見て出向いた歯科クリニックでインプラントを契約した。抜歯をし土台を入れ5カ月が経過したが、炎症が治まらず、抗生物質をずっと服用し不快な日々が続き、精神的にも参ってしまった」(50代・女性・東京都)

 

インプラントは、虫歯や歯周病、事故や腫瘍といった理由で歯を抜くことになったとき、顎の骨に穴を開けてチタン(合金の場合もある)製の支柱を埋め込み、その上に人工の歯(上物)をつけて修復する技術だ。

 

いまや一般的な治療といわれるインプラント。だが、’13年に日本歯科医学会が289人の歯科医を対象にとったアンケートでは、インプラント治療でトラブルを経験したことがある医師が約60%。うち約25%が重篤な偶発症を経験しているという驚くべき数字も出ている。

 

トラブル続出の最大の要因は「施術を受ける患者さんへの説明不足」と語るのは、’14年10月『歯科医師100人に聞いた「インプラントのメリット・デメリット」』(日本歯科新聞社刊)をまとめた水谷惟紗久さん。水谷さんは歯科医向け『月刊アポロニア21』編集長として、十数年にわたり、歯科医療を取材してきた。

 

「患者さん向けのアンケートでは、インプラントにした70%以上の人が、現状に満足しています。否定的になることはありません。ただし、施術する歯科医は慎重に選ぶべきでしょう」

 

そこで水谷さんに、インプラントでトラブルに遭わない歯科医の選び方を聞いた。

 

【1】きちんと問診をして不適格な人には「おすすめできない」とはっきり言える歯科医

「血圧や血糖値、喫煙の有無などを把握し、施術の判断をする歯科医であること。顎の骨の厚さをはじめとする解剖学的状態など、きちんと説明する歯科医が望ましい」

 

【2】使用するインプラントメーカーを教えてくれるか?

「将来、ほかの歯科医にかかることを前提に使用するメーカー名を患者が控えておくと、後々のトラブルに対応しやすい。これらの情報開示に協力的な歯科医を選ぶべきです」

 

【3】メインテナンスの体制が取られているか?

「長期にわたり定期管理によるメインテナンスとセルフケアによってインプラント周囲炎を予防していく必要があるため、継続的に対応してくれる体制になっている医院を選ぶことが大切」

 

【4】最新がいいとは限らない

「ひとつの術式を評価するためには、ある程度の期間が必要になります。3Dデータを活用した最新技術などの中には、外科手術の基本から外れているものもある。逆に、開発から何十年もたっているオーソドックスな方法がいいとされることもあります」

 

【5】妥当な経験値のある歯科医を選ぶ

「施術数だけでは経験値は判断しにくいと考えます。よく広告で『年間○本施術』とうたっている医院がありますが、このようなところは、適応判断を甘くして無理にインプラントを実施しているリスクもあると考えてください」

 

【6】安さを売り物にしたところは避ける

「いまインプラントの価格は二極化しています。安かろう悪かろうとは限らないものの、安くていい歯科医はなかなか見つからないものです」

 

【7】通いやすい医院にする

「年間数回メインテナンスに通うことを考えると、自宅から遠方の医院は考えもの」

 

【8】CTの有無は関係ない?

「CTによる画像診断は医療安全の面で重要だとされているのは確か。かといって、その歯科医院にCTが設置されていることは必須ではなく、専門医療機関に紹介して撮影すれば事足りると思います」

 

【9】診断から施術まで猶予をくれない歯科医は避ける

「『あなたにはインプラントしかありません』など、患者に選択の余地を与えない歯科医もいる。しかし、インプラントにするかそのほかの方法にするかは、患者自身が決めること。最低1週間程度は患者に猶予を置き、考える時間を与える歯科医が望ましい」

 

【10】大学病院も絶対ではない

「大きなところなら安心と大学病院を選ぶ患者さんもいるが、大学病院もトラブルを抱えているのが実情です」

 

もし、インプラントを選択するときはくれぐれも慎重に歯科医を選ぶことが重要だ。

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