40〜79歳の男女8万6千人のデータ解析から、1日にテレビを見ている時間が長い人ほど、肺塞栓症による死亡リスクがアップする、という結果が明らかになった。調査したのは、大阪大学公衆衛生学教室の白川透氏。
とくに49〜59歳の層では、1日に5時間以上テレビを見ている人は、2時間30分未満の人と比較して、肺塞栓症になる死亡リスクが6倍超になるという!東京医科歯科大学の非常勤講師で、医療ジャーナリストの宇山恵子さんが解説する。
「肺塞栓症は『エコノミー症候群』とも呼ばれるものです。飛行機のエコノミークラスのシートで長時間、動かずに乗っていると、足の血行が悪くなり、血の塊ができていきます。その塊が、血流に乗って肺の細い血管にまで入り込んでしまうのです。その結果、肺の血管が詰まり、壊死してしまう、致死率15%という恐ろしい病気です。自宅で長時間、座ったままでテレビを見ていたり、長時間パソコンに向かっていたりすると、肺塞栓症を引き起こすリスクが高まります」
長時間のテレビ視聴はさまざまな病気を引き起こすことが知られている。
「米国立がん研究所でも、テレビの視聴時間が1日1時間未満の人に比べて、3〜4時間の人は、がん、心臓病、慢性閉塞肺疾患、糖尿病などの病気による死亡率が15%、7時間以上の人は47%も増加するという報告があったばかりです」
しかも発表した研究者は、「たとえ運動していても、このリスクからは逃れることはできない」と警告している。
白川氏は報告のなかで、テレビを見るときの注意点について「休憩をはさんだり、立ち上がって歩き回ったりすることも必要。水分補給など、エコノミー症候群と同じような予防策を講じること」とアドバイスしている。さらに、宇山さんがこう付け加えてくれた。
「休憩は1時間に1回はとって。ストレッチをしたり、家事や掃除をするのも効果的です。またテレビを見ながら、番組の内容に怒ったり、出演者にケチを付けたりする人は、ストレスがたまって血圧が上がったり、血行が悪くなったりすることがあります。テレビは、できるだけ笑いながら見ることです。さらにお酒やたばこ、ジャンクフードを片手にテレビを見るのは厳禁。ダラダラと飲み食いすることで、糖尿病、心臓病、肝臓病などのリスクが高まり、寿命は確実に縮んでしまいます」