「食中毒を引き起こす細菌のほとんどは食品の中で増殖しますが、ノロウイルスは人の十二指腸や小腸などの腸管でしか増殖しないという特徴があります。ノロウイルス患者の吐しゃ物や便が人の手などを介して、物や食品に触れ、人の口に入ってしまうことが発症の原因となっています。また、冬の寒さで体温が下がり、免疫機能も低下するため、ウイルスに感染しやすい状態になっていることも冬にノロウイルスが流行する理由の1つでしょう」
そう語るのは、おおたけ消化器内科クリニック院長・大竹真一郎先生。ノロウイルスやロタウイルス(子どもにかかりやすい)などによる感染性胃腸炎は、冬に本格的な流行を迎える。特に冬場に起こる食中毒のおよそ9割はノロウイルスが原因だといわれている。
「ノロウイルスやロタウイルスは発症すると激しい下痢やおう吐の症状が出ます。下痢やおう吐はウイルスを体外に排出している状態と同時に、体の機能維持に重要な体液も大量に排出しているわけです。これを放置していると、脱水症状が現れ、深刻な病気につながることもあります。子どもや高齢者は死につながることもあるので、脱水症の危険性を認識しておきたいものです」(大竹先生・以下同)
ノロウイルスには有効な抗ウイルス薬はなく、「予防には手洗いの徹底や、感染者のおう吐物の適切な処理しかありません」と大竹先生は言う。そこで、大切になってくるのが正しい手の洗い方が。
「ノロウイルスは酸や乾燥に強く、アルコール消毒でも死滅しづらい強力なウイルスです。目に見えないので汚染されている場所がわからず、予防ワクチンなどもありません。感染予防の基本は手洗い。適当に洗わず、水を流しながら、最低3分以上こすり洗いましょう。また、家族で同じタオルを使うことで感染することもありますので、タオルは個人用タオルを使ってください。さらに、水道の蛇口は洗う前の手で触れているので、手といっしょに洗い、手を再び汚さないようにすることも大切です」
ノロウイルスの潜伏期間は一般的に1~2日、発症すると腹痛、おう吐、下痢、発熱などを引き起こす。大人なら発症して2日ほどで症状が回復するが、子どもや高齢者のケアには十分な注意を。