「耳の入口から2.5センチほど奥にある鼓膜までが外耳、鼓膜から1センチほど奥にある空間が中耳、さらに奥にある部分が内耳になります」
そう耳の構造を教えてくれるのは、『めまいは寝転がり体操で治る』(マキノ出版)の著書もある、聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科教授の肥塚泉先生。内耳は、鼓膜からの振動を電気信号にして、脳に伝える。内耳にある蝸牛という器官は、マイクのようなもの。そして前庭神経は、体の平衡感覚を保つために存在している。
「三半規管は3つの半円の管からできており、内部はリンパ液で満たされ、その流れ方で垂直方向、水平方向の回転運動を感じ取ります。三半規管の下部にある耳石器には、カルシウムでできた無数の『耳石』が詰まっており、耳石が動くことで私たちは上下、前後、左右の動きや傾き、重力を認識します」
ふだん私たちがまっすぐ歩けているのは、“健康な耳のおかげ”といってもいいのだ。しかし、ふだんの生活を送っていくうえで、知らない間に耳を傷つけていることも……。そこで、肥塚先生が、「やってしまいがち」なNG習慣を教えてくれた。
■無理な耳かきは外耳炎に。目安は2週間に1回!
気持ちよくて、つい奥のほうまでガリガリとやってしまうのが耳かき。
「耳の内部は、骨の上に、薄い皮膚があるだけ。とがっていたりする硬い耳かきでは、すぐに傷つき、外耳炎を引き起こしてしまいます」(肥塚先生・以下同)
また、外耳の形は人それぞれで違っている。中耳までくねくねと蛇行している人は、耳かきを入れても側面に当たりやすく、傷つける可能性が高い。
「耳鼻科を受診し、自分の耳の形を知っておくことも必要でしょう。そもそも、耳あかは自然と外に押し出されます。もし耳かきをするなら、2週間に1度くらい、耳穴から1センチくらいまでの範囲を綿棒でやさしく掃除しましょう」
■音楽を聴くときは、なるべくヘッドホンで
「知っておいてほしいのは、耳も臓器の1つだということです。アルコールを飲みすぎると肝臓が傷むのと同じように、大きな音は耳に負担がかかり、将来の難聴のリスクとなりえます」
外出時に音楽を聴く際には、耳に当てるヘッドホンタイプと、耳に入れるイヤホンタイプを使うのが一般的。
「同じ性能なら、ヘッドホンタイプのほうが耳に優しいといえます。それは、ヘッドホンのほうが耳をすっぽりと覆うため、消音性に優れているためです。周囲がうるさければ、より大きな音を出さなければならず、騒音を音楽でかき消すことになる。イヤホンタイプであっても、ノイズキャンセラー機能がついたものを使用して“適音”を心がけましょう」
「耳が遠くなる」など、加齢に伴う耳の機能の低下は治すことは難しい。そのため補聴器に頼ることになるが……。
「『補聴器適合に関する診療情報提供書』がなく、補聴器の販売店に行くと、必要以上の最高級品を提案され、高額になるケースも聞きます。まずは『補聴器相談医』の認定を受けている耳鼻咽喉科医に相談しましょう」
■鼻をかまずにすすると、中耳炎になる可能性も
「中耳と鼻は、耳管でつながっています。つまり、鼻をすすることで、鼻水に含まれたウイルスや菌が中耳に入り、中耳炎を起こすことが考えられます」
花粉症の人は鼻水に悩むこの季節。鼻はすすらず、かむようにしよう。