花粉の季節が過ぎればすぐに、夏風邪のシーズン、そして秋のブタクサ花粉……。現代人は、つねにせきやくしゃみに悩まされていると言っていい。しかし、大きな音を出すのは恥ずかしいと、くしゃみをしきらずに途中で止めてしまう人も多いのでは?
この“オンナのエチケット”が骨折などのケガや内臓の病気にもつながる超・悪習慣だというのだ。
「そもそも、くしゃみというのは、体内に入ろうとした異物を追い出すための生体反射なので、無理に止めてはいけないもの。急に温度が下がったときにもくしゃみが出ますが、これは筋肉を一時的に収縮させ、体温を上げるために起きます。くしゃみは、私たちの体を守るためのシステムなんです」
こう語るのは、みずい整形外科の水井睦院長だ。そんなくしゃみを無理にガマンすると、体内への異物侵入を許すより怖い副作用が生じるという。水井先生に詳しく聞いた。
「くしゃみをガマンすると、外に出られなかったエネルギーが体内への負荷となり、『背骨圧迫骨折』を起こすことも。特に、閉経後の女性はカルシウムが不足し、骨粗しょう症やその予備軍が多い。スカスカになった骨はくしゃみの圧にも弱くなっているので、注意が必要なんです」(水井先生・以下同)
背骨圧迫骨折は気づかないことも多い。放置すると胃や食道にも圧がかかり、胃液が逆流する逆流性食道炎の原因にもなる。さらに心臓なども圧迫されるので、心不全のリスクも高まるという。
圧がかかるのは内臓だけではない。本来、体外に放出するはずだった風圧が、耳や鼻腔、上顎洞、脊髄などに逃げてしまうと……。
「耳が聞こえづらくなる原因になりますし、ひどい場合には鼓膜が破裂することも。そして、さらに怖いのが『脳脊髄液減少症』です。脊髄に圧がかかって穴が開き、そこから髄液が漏れてしまうのです。頭痛、吐き気、めまい、耳鳴りなどを引き起こします」
そもそも、くしゃみの音がガマンする必要がないほど小さい人もいる。記者の場合は「ブエーックショイィ!!」という典型的な“オッサンくしゃみ”なので、つい恥ずかしくて抑えようとしてしまうのだが……。
「どんなくしゃみでも恥ずかしいことではありませんから、しっかりとするようにしましょう」
そこで水井先生に、くしゃみの衝撃を弱める“正しいくしゃみの作法”を教えてもらった。
「ハッハッ……」とくしゃみの兆候が表れたら、サッと背中と首を丸め、来る衝撃を逃がす準備を。座っているときは机などに手をついて少し体重をかけるようにする。立っている場合はひざを曲げ、できるときは近くにあるものにつかまろう。
そして、くしゃみが出るときに、鼻や口を押えるのは厳禁。公共の場では、鼻から少し離したところに手をかざす程度にするといい。
くしゃみの後に出た鼻水も、無理にかんではダメ。子どものときに習った「片方ずつチーン」は、じつはNGだ。
「片方の鼻を押さえて力強くかむと、くしゃみ同様に体の内部に圧がかかり、くしゃみをガマンしたときと同じ病気の要因となります。鼻を上部からティッシュでそっと押さえ、両穴同時に鼻からそっと、息を吐くようにかみましょう」