「春が近づくと気になるのはダイエットですが、なかでも落ちにくいのが太ももの脂肪。しかし、実は太ももやお尻の脂肪は、おなかの脂肪に比べて健康にいいのです。以前、英オックスフォード大学が発表したものですが、おなかの脂肪が糖尿病や心臓病のリスクを高めるのに対し、太ももやお尻の脂肪は健康の増進につながっています」

 

こう語るのは、順天堂大学医学部教授の小林弘幸先生だ。同じ脂肪なのに、いったいなぜ?

 

「違いは『内臓脂肪』と『皮下脂肪』です。人間の体は脂肪をエネルギー源として脂肪組織に蓄え、必要に応じて脂肪酸に分解し、消費します。おなかの脂肪の多くは『内臓脂肪』ですが、これは短期間で頻繁に脂肪酸をためたり、出したりを繰り返すのが特徴。ところが脂肪酸があまり体内に出回ると、糖尿病や心臓病の発症につながります」

 

いっぽう、太ももやお尻の筋肉は「皮下脂肪」で、内臓脂肪にくらべて燃焼しにくく、長期間貯蔵されるのが特徴とのこと。だから、太ももが太いぶんには、脂肪酸は頻繁には出回らないのだという。さらに、それぞれの脂肪が出す物質には違いが!

 

「おなかにつく内臓脂肪は、炎症性サイトカインという物質を分泌。これがインスリン抵抗性を起こして糖を筋肉に取り込みにくくしたり、動脈硬化を促進させたりします。ところが、皮下脂肪は食欲抑制ホルモンであるレプチンを分泌します。血糖をコントロールするアディポネクチンも、お尻や太ももの脂肪から分泌され、脂肪自体の燃焼を促進するのです」

 

つまり、メタボが健康に悪いというのは主に内臓脂肪のことで、太ももにつく脂肪は、むしろ女性の美と健康の味方だったのだ!

 

「そもそも、太ももに落ちにくい皮下脂肪がたくさんつくのは、大腿動脈という重要な血管を保護するため。女性はスーパーモデルのようなスレンダーなスタイルを求めがちですが、『太い』からこそ『太もも』です。過剰なダイエットはかえって健康美を損ないますので、あまり神経質にならないでくださいね」

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