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プロのジャズピアニストで産婦人科医という異色の経歴を持つ主人公・鴻鳥サクラを綾野剛が演じるテレビドラマ『コウノドリ』が話題だ。初回放送を見た視聴者からは「自分の出産を思い出して泣いた」「夫に見せたい」などの反響も寄せられている。

 

『コウノドリ』は週刊漫画誌『モーニング』(講談社)で連載中の、ドラマの原作となる同名漫画。じつはその主人公には、実在のモデルがいる。りんくう総合医療センター(大阪府)で産婦人科部長を務めている荻田和秀先生だ。

 

ドラマ制作の取材協力者も務める荻田先生が、作品を通して感じてほしいのは、すべての出産が“奇跡”であること、そしてその“奇跡”を母親たちに最高な状態で迎えてほしいということ。しかし、自覚不足、知識不足の“困った妊婦”が多いのも現実だ。漫画『コウノドリ』では、このような母親の姿も描かれている。

 

「妊娠中なのにたばこをやめられないお母さんは、一定数います。でも喫煙は胎盤早期剥離などのリスクも高くなるし、赤ちゃんの脳の発育にも悪影響を及ぼす可能性があります。できればやめてほしい。また、『安定期』に入ってからの旅行も、よくあるケースです。出産すると育児に追われるから、その前の楽しみとして旅行に行く人もいますが、これも賛成はできません。すべての週数であらゆることが起こるので、本当の意味で『安定期』はありません。実際にリゾート地の病院の中には、急に切迫早産となって駆け込む旅行者が多いところもあると聞きます」(荻田先生・以下同)

 

実は、このような飛び込み患者は、リゾート地の病院だけではないそうだ。

 

「家庭環境などさまざまなことが要因となりますが、一度も妊婦健診に来ないで、出産のときはじめて病院に来るケースも。10代で妊娠していることを親に言えず、自分1人で産んで、ハサミでへその緒を切って、赤ちゃんを抱いて病院まで連れてきたケースもありました。別の30代女性の出産では、所持金が300円ほどしかなくて、自殺の名所への切符が入っていたことも。『何かあったら死ぬつもりだったの?』と聞くと、『うん』とうなずいていました」

 

また“ナチュラル志向”で、医療の手を加えない“自然”な出産を望む親も少なくない。

 

「風邪をひいてお薬を出しても『赤ちゃんに悪影響がある』と思い込んで飲まなかったり、自然分娩こそ“母親の愛だ”とのこだわりが強すぎて、何日も陣痛に苦しみ、赤ちゃんが危険な状態になって、ようやく病院に運ばれるようなことは日常茶飯事なんですね」

 

そんなとき、荻田先生はお母さんたちに問いかける。「何がベストなのか“赤ちゃんの声”を聞いてください」と。

 

「赤ちゃんを産むということは、お父さんとお母さんがリーダーとなり、ボクら産婦人科や小児科の医療スタッフがサポートして生まれる奇跡。新しい人生のスタートに立ち会えるのは、素晴らしいこと。ほとんどが無事に出産を迎えられるので過度に怖がる必要はありませんが、みんなが笑顔でその瞬間を迎えられるように、必要なことは準備するべきだと思います。『コウノドリ』を通して、みなさんにもそれを感じてほしいですね」

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