小さじ1杯の血液で”がんの可能性”を発見する「最新検査方法」
「家族に卵巣がんや乳がんに罹患した人がいて、遺伝性が心配だという方にとっても、『アミノインデックス(AICS)がんリスクスクリーニング』は有効な可能性があります。日本では遺伝子検査をして、そこでいわゆる『がん家系』であると判断されても、その後、どう治療するかという指針がしっかりと整備されていません。また、予防的な治療もまだ普及していないのでリスクの高い人は早期発見するしかないのです」
そう話すのは、横浜市立大学附属病院・化学療法センター長の宮城悦子准教授。『AICSがんリスクスクリーニング』とは、わずか5ミリリットル(小さじ1杯)ほどの血液を採取するだけで、がんに罹患している可能性を調べられる血液検査法。宮城准教授はこの最新検査法を、味の素との共同研究で開発した人物。
研究の発端となったのは、がん患者にアミノ酸の血中濃度の変化が見られたこと。従来のアミノ酸の測定時間を大幅に短縮する高速分析法を同社が開発したことから、この検査法が実現化した。この検査が女性にとってうれしいのは、これまで検診での発見が困難だった子宮体がん、卵巣がんを早期で検出できる精度が高いことだ。
「健康なときは、ほぼ一定に保たれているアミノ酸の血中濃度比率のバランスが、がんに罹患すると動くことがわかっています。このバランスは、異常が起きている臓器によってそれぞれ特徴が見られるため、どのがんのリスクが高いのかランクで判断することが可能になったのです」(宮城准教授)
今まで、がん発見の指標とされてきた腫瘍マーカー(血液検査で体内のがん細胞を産生する物質の値を調べる)と比較しても、この検査の精度が高いことを示すデータもある。子宮体がんステージ1では、この検査の検出率が55%なのに対し、腫瘍マーカーは15%となっている。ただし、宮城准教授は現時点での注意点をこう述べる。
「この検査法は、すべての女性のがん発見に万能ではないことは知っておいてください。たとえば子宮頸がんの前がん病変の異形成や、初期の上皮内がんの検出などには不向きです。それらのがんに関しては、定期的な細胞診を採取する従来の検診は欠かせません」