日本初公開となる世界最長の「死者の書」に書かれていること
大英博物館が誇る世界屈指のエジプトコレクションが日本にやってくる。7月7日から9月17日まで、東京・六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで『大英博物館 古代エジプト展』開催。古代エジプト人の死生観にスポットをあてた大規模展だが、注目は現存する『死者の書』のなかで世界最長37メートルにおよぶ「グリーンフィールド・パピルス」だ。
『死者の書』には何が書かれているのか。古代エジプト人は、人は死んでも冥界の旅を経て来世で復活すると信じていた。その旅路には火炎の湖や毒蛇、死刑執行人など危険がいっぱいだ。『死者の書』はそれらをくぐり抜けるための呪文(まじない)がかかれたガイドブックなのである。200以上の呪文を組み合わせ、死者のためにオーダーメイドで作られたパピルスの巻物で、死者とともに埋葬された。
今回初来日する「グリーンフィールド・パピルス」は、約3000年前にテーベ(いまのルクソール)を治めたアメン大司祭パネジェム2世の娘、ネシタネベトイシェルウに捧げられたもの。現在では全96葉にわかれているが、これほど長くなったのは、彼女の地位や華美なものが貴ばれた時代などさまざまな要因が重なったためとみられる。
その見逃せないポイントの1つを、エジプト壁画研究家の村治笙子さんに聞いてみた。
「天地創造の挿絵はほかの『死者の書』では見られない貴重なものです。四つんばいになっている天の女神ヌウトと地面に横たわる大地の神ゲフはもともと重なり合っていましたが、大気の神シュウが嫉妬しヌウトを持ち上げて引き離したことが天と地のはじまりとされています」
何人かの職人の手によって描かれているため、途中で絵柄がガラリと変わる箇所も見どころのひとつだ。