「国際宇宙ステーションで船長の若田さんの実験のお手伝いをするんだ」と話すのは、身長34cm、重さ1kg、世界初の会話のできる人型ロボット宇宙飛行士『KIROBO(キロボ)』。
キロボは8月4日に種子島宇宙センターから打ち上げられるロケット『こうのとり』4号に乗って、国際ステーション(ISS)に到着。今年11月以降に予定されている宇宙飛行士・若田光一さんの到着を待って、宇宙に長期滞在する若田さんの話し相手になったり、『きぼう』日本実験棟内で、世界初の人とロボットの会話実験などが行われる予定だ。
キロボの大きな特徴は、自然な音声認識と顔認証システム。内蔵カメラで、相手の顔を認識し、識別して反応するため、キロボの中に蓄積された相手の情報をもとに、よりパーソナルな会話が可能になった。生みの親・高橋智隆さん(東京大学先端科学技術研究センター特任准教授・38)はこう話す。
「現在、若田さんはアメリカ在住のため、実際の対面は宇宙で。ただテレビ会議の席で数回、キロボと会っていますので、そこで顔認証し、すでに“顔見知り”の関係。宇宙ステーションで若田さんと会ったときは、最初から『宇宙生活はどう?』みたいに相棒気取りで話すはずです」
そんな高橋さんの話を横で聞いているキロボ。首や手足が微妙に動き、声に反応しているのが伝わってくる。
「人間って、黙っているときも絶えず微妙に動いているでしょう。ところがこれまでの対話型ロボットはじっとしたまま話す。これでは感情移入ができません。だから、キロボも絶えずどこか自然に動くようプログラミングしました」(高橋さん)
キロボには、トヨタが高度な音声認識と顔認証の技術を提供している。トヨタ自動車製品企画室の片岡史憲さん(47)は次のように語る。
「いかに人と自然に会話するか、そのヒントは相づちにあると思っていました。キロボは『うん』『そうだね』『なるほど』など、会話の合間に、自然な動作とともに相づちを打つんです。これまでの一問一答型会話ロボットとの決定的に違うとことです」
これによって、相手と長く会話をすることが可能となったのだ。
「長い会話をすることで、相手の言葉の中に『むずかしい』『困った』など、ネガティブな単語が多いか、『うれしい』『楽しい』などポジティブな単語が多いかを、人工知能が判断。感情推定を行い、ネガティブだったら『それはたいへんだね』と励ましたり、ポジティブだったら『よかったね』といっしょに喜んだり、キロボはしてくれます。誰でも自分の感情をくみ取ってくれる存在には愛着がわくはず」(片岡さん)