日本人の10人に1人が、下痢や便秘を発症する「過敏性腸症候群」に悩んでいるが、その85%が小腸に原因アリだった! おなかの不調のみならず、がんや認知症まで進行させるSIBOとはーー?
「大腸の健康が脚光を浴びていますが、もっと大切なのは小腸を守ること。不調の原因は小腸なのです!」
そう宣言するのは、江田クリニックの江田証院長。小腸の病気「SIBO(小腸内細菌増殖症)」の存在を日本で初めて明らかにした『小腸を強くすれば病気にならない』(インプレス)を出版した、“腸活”の第一人者だ。
「いま、日本人の間でこのSIBOがひそかに増えています。SIBOになると、おなかの不調だけでなく肥満や貧血、視力障害やうつ症状のほか、がんの発症リスクも上昇。SIBOから身を守ることが病気予防につながるのです」(江田先生・以下同)
SIBOが医学会で認識されるようになったのはここ数年。小腸の中で腸内細菌が爆発的に増えてしまう病気だ。
「本来、大腸にあるべき細菌たちが小腸に停滞、繁殖してしまった状態です。これによって小腸内にガスが発生し、おなかの不調をはじめ、さまざまな病気の要因となるのです」
SIBO患者の小腸内の細菌数は、正常値の10倍に相当する10万個超。そして、患者は増加の一途をたどっている。
「下痢や便秘を引き起こす過敏性腸症候群患者の85%が、SIBOを発症していたのです。最大の原因は、現代の食生活。パンやパスタなどの小麦食品や甘いジュースに含まれる糖質は小腸で吸収されにくく、細菌を発生させやすい。これらの糖質を大量摂取することで、SIBOを引き起こしているのです」
SIBOが過敏性腸症候群より恐ろしい点は、ほかの大きな病気を引き起こしてしまうことだ。SIBOには下痢型と便秘型があり、そのものの症状は重篤ではない。しかし、ガスによって伸縮を繰り返えし、腸内膜がダメージを受け続けると、症状は深刻になる。
「小腸の腸壁は、栄養素を吸収し血管に送り出す役割があります。しかし、超粘膜が傷んでいると、細菌が作り出した毒素も一緒に送り込んでしまうのです。こうした腸を『リーキーガット症候群』といいますが、こうなると毒素が腸の血管から全身をめぐってしまう。これが免疫力の低下を引き起こし、慢性関節リウマチなど自己免疫疾患や肝疾患の要因となるのです」
さらに、細菌が胆汁酸塩の働きを妨げ脂肪が吸収しにくくなるため、脂溶性ビタミンの欠乏症を招く。
「とくに体内で合成できないビタミンA、E、Dは欠乏しやすく、同じく免疫力の低下を引き起こすほか、がんの発症リスク等も上昇します」
必要な栄養素を細菌に横取りされ体調が悪化する場合も。
「たとえば、ビタミンB12の欠乏は貧血やうつ症状、疲労のほか、近年では認知症を早める危険性も指摘されています。亜鉛不足は肌荒れなど美容面での悪影響も。マグネシウムや鉄分が不足すれば、生理痛の悪化やむずむず脚症候群が起こります」
まさに万病のもと、SIBO。そこでSIBOにならない生活習慣を紹介。
【1】炭水化物はお米やそばに
小麦でできたもの(パン、うどん、パスタ、シリアルなど)はなるべく食べない。
【2】小腸にいいものを食べる
ブロッコリースプラウト(抗菌効果)、ココア(ピロリ菌を減らす効果)、青魚(EPA、DHAが粘膜を強化)、サケ(小腸の細胞を強化)など。
【3】食後3時間45分はあける
食べ物が小腸を抜けるには3時間45分ほどかかる。細菌増殖を抑えるため、少なくとも食後3時間45分は間食を避けることで腸がきれいになる。
【4】息が切れるくらいの運動を
強度のある運動をすることで、小腸が食べ物を大腸へと送り込む「ぜん動運動」が活発に。ウオーキングなど軽度の運動では効果ナシ。ジョギングや腹筋などを、できれば毎日行おう。
【5】朝晩のSIBOマッサージ
大腸のバウヒン弁(細菌逆流防止弁)をマッサージし、細菌の逆流を防ごう。右の腰骨とおへそを結んだ直線の3分の1のところに右手を置き、左手で右手に向かってJを描くようにマッサージ。起床後、就寝前に5回ずつ。
SIBOにならない生活習慣を実践し、小腸の強化に努めよう!