血液型別に“死にいたる病気”があるという。誰もが持っている血液型それぞれに、固有のリスクが潜んでいるとは驚きだが、すべて医学的な統計データに裏付けられたものなのだ。せめて、自分のリスクを知って“転ばぬ先のつえ”としたいもの!
今年5月、東京医科歯科大の高山渉特任教授(外傷外科)らが「重傷のケガで緊急搬送された患者のうち、死亡率はO型が28%、O型以外が11%で、O型のみが2倍以上高いことがわかった」と発表。大きな反響を呼んでいる。
調査は’13〜’15年度に入院が必要となる重傷で、東京医科歯科大病院などに運ばれた901人の患者のデータを分析したもの。
「これまで血液型による血の固まりやすさは、外科的に大差はないとされてきました。ところが違いがあることがはっきり数字で示された。画期的な調査だと思います」
こう話すのは、血液型の科学的調査にくわしい長浜バイオ大学教授の永田宏先生。みなさんは血液型についてどこまでご存じだろうか。現在では、いちばん一般的なABO式血液型以外にもRh(+)(−)のほか、100種類以上の分類がある。なかでも重要なのがABO式血液型だ。日本人はおおよそA型4割、O型3割、B型2割、AB型1割に分けられるそう。
「出血の際などに血液を固めて止血するための血液凝固因子は、すべての血液型で共通に存在します。ところがABO式血液型によって、一部の凝固因子の濃度に違いがあり、ほかの血液型に比べ、O型は血が止まりにくいのです。そのことが、重傷のケガでO型の死亡率が高い理由と説明できます」(永田先生・以下同)
ABO式血液型が発見されて118年。まだ血液型の研究は始まったばかりと言えるが、近年、世界の医療機関の調査で、ほかにも血液型による、さまざまなリスクが報告されている。永田先生が解説してくれた。
インドや東南アジアの人は、3〜4割がB型になる。
「じつはB型が多い地域は、コレラが蔓延したエリア。コレラは、コレラ菌が生み出す毒素によって激しい下痢に見舞われ、死にいたる病いです。日本でも江戸末期から明治初頭にかけて多くの死者を出しました。そのコレラに感染しても重症化しにくいのがB型。逆に重症化しやすいのがO型とわかってきています。このため、東南アジアではB型の人が生き残り、現在の割合になっているようです」
B型にはイヤなデータがある。
「米国の国立がん研究所が’09年に発表した論文では、もっともすい臓がんになりやすいのはB型です」
この調査では、O型がすい臓がんになるリスクを1とした場合、なんとB型は1.72倍(A型は1.32倍、AB型は1.51倍)。
「すい臓がんの場合、喫煙者は非喫煙者の1.8倍のリスクがあるとされていますので、O型と比べてB型には、喫煙と同じくらいの危険性があると言えます」
その理由はまだ解明されていない。ただ遺伝子のDNAレベルで、血液型を決める遺伝子と、がんのリスクを左右する遺伝子が隣り合わせていることが、なんらかの影響を与えているのではないか、という研究が進んでいるという。
世界的に見て数が少ないのがAB型。A型とB型の血液凝固遺伝子を併せ持っているため、病気リスクの傾向もA型、B型に似ているが、血栓のリスクはもっとも大きい。
「正直なところ、世界的に少ない血液型なので、統計的なデータが不足していることはいなめませんが、’09年にアメリカで行われた研究ではO型に比べ1.59倍、リスクが高いとされています」
いわゆる“エコノミークラス症候群”と呼ばれる肺塞栓症。長い間、座っているなどして、足の静脈にできた血栓が肺に飛び、肺動脈をふさいでしまう病気だが、これも米国の研究でO型の約10倍なりやすいとの報告もある。