「最近、“声”を出す機会がめっきり減っています。以前は電話や井戸端会議で話をしていたのに、最近はメールだけで用件を伝える人も多くなりました。でも、声はコミュニケーションの大事なツールです。みなさん、無意識に声をコントロールしているのですが、少し高めの声を出すと若めに見られたり、イメージが変わるんですね。声の出し方を意識することで人間関係が円滑に運び、見た目の美しさにもつながります」
そう語るのは『人生は「声」で決まる』(朝日新書)を出版した、劇作家・演出家の竹内一郎さんだ。竹内さんは、ベストセラーとなった『人は見た目が9割』(新潮新書)などでファッションやヘアスタイルなど「非言語情報」の重要性を提唱してきた。
「メールのような平坦な文字によるコミュニケーションでは、感情は伝わりにくい。しかし、同じ言葉でも声に出し、抑揚を付けたり、ふくよかなしゃべり方をするだけでとげとげしさが薄れ、相手の心に届きやすくなる。声は好印象を与える手助けにもなるのです」(竹内さん・以下同)
とはいうものの、自分の声が好きになれないという人も多いはず。
「音楽・音声ジャーナリストの山崎広子さんの調査によると、日本人の8割が“自分の声が嫌い”だと考えているそうです。しかし、声は持って生まれたものだし、そもそもいい声、悪い声はなく、すべて個性なんです」
タレントでも、個性的な声で好印象を得る人がいる。
「YOUさんなんかは代表的ですね。少しハスキーで、高めの声を聞けばYOUさんだとすぐにわかります。バラエティ番組などで少し毒舌めいたことを言っても嫌われないのは、声が影響していると思います。吉田羊さんも、舞台で活躍していた女優だけあって、声に力がある。無垢で気取らない声が、若々しさと人気の一因なのでしょう」
竹内さんは、大竹しのぶの声の使い分け方はまさにお手本になるものだという。
「舞台『ピアフ』ではシャンソン歌手のエディット・ピアフを若いころから歌手として大成するまでを演じ分けています。テレビと違って舞台では、細かい表情の変化や立ち居振舞いでキャラクターを表現するには限界があります。このように同一人物でも違う年齢を演じ分けたり、舞台ごとにまったく違うキャラクターを演じられるのは、声を使い分けているからこそ。それほど声は、個性を表し、相手に与える印象を変える力があるんです。さすがに大竹さんのように広く声を使い分けることは難しいので、まずは自分の声に自信を持てるようになりましょう」
自信を持つために“いい声”とはどんなものか知りたい。竹内さんに聞いてみた。
「本来、声は個性なので良しあしはないのですが、通りのいい声であることが基本です。大きな声である必要はありません。家の中でのハミングでもいいので、まずは声帯を震わせましょう。50歳前後の女性は閉経を迎えるため、ホルモンバランスの関係で声がかすれ、低くなる傾向があります。そこでポイントとなるのは、ふだんより心持ち高い声を出すこと。声帯は使うことで、鍛えられ声の老化も防ぐことができます。高めの声もだんだん出せるようになり、若く見られます」
声の通りをよくしようと思えば、顔を上げる姿勢も必須となる。
「1人カラオケもいいでしょう。じつはカラオケは、座り位置からモニターを見上げて歌うため、人の顔を見て話す姿勢が、自然と身に付くんです」