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「今や人生100年時代に突入しましたが、日常生活を支障なく過ごせる“健康寿命”は平均寿命より10~15年短いです。高齢者が自立した生活を送ることが困難となってしまう原因には転倒や関節疾患などがありますが、それらのリスクは筋力が高ければ和らげることができます。すなわち、健康寿命を延ばすには、筋肉の老化を防ぐことが不可欠なのです」

 

こう語るのは、近畿大学生物理工学部准教授の谷本道哉先生。8月27~30日に放送され話題になった『みんなで筋肉体操』(NHK総合)の指南役を務めて注目を浴びた筋肉のエキスパートだ。

 

筋肉量は30歳前後をピークに減り始め、50~60代で急激にそのスピードが増す。体重を支える太ももの筋肉では80代の平均はピーク時の半分にまでなってしまうという。加齢による筋肉量の低下は、要介護のリスクになると谷本先生は警鐘を鳴らす。

 

「ただし、筋肉は何歳から鍛えても増えてくれる頼もしい存在。日ごろまったく運動の習慣がない人であっても、今からでも、“筋肉貯金”を立て直すことが可能です」

 

「筋肉は裏切らない」――。これは『みんなで筋肉体操』のラストに谷本先生が放っていた決めゼリフ。運動不足が気になる人も、できることから始めることが大切だ。

 

まずは、現状の筋力をチェックしてみよう。次の「筋肉貯金残高」チェックリストで多く当てはまるようなら筋肉貯金の“残高”が心もとない証拠だ。

 

□立ったまま靴下をはけない
□机や手すりなどに手をつかないと立ち上がれない
□階段の上り下りには手すりが必要
□階段を上るときに、手で膝を押している
□階段を上るときに、1段飛ばしができない
□道を歩いているとき、小さな段差でつまづく
□速く歩くことができず、青信号の横断が不安
□布団の上げ下ろしができない
□10分以上連続して歩くことができない(座って休憩が必要)

 

続いて「筋肉貯金残高」判定テストで、実際の筋肉量をチェック。

 

■「標準テスト」イスから片足立ち上がり

1)高さ40センチ程度のイスに腰かけ、手を胸の前に組む。このとき、しっかり前傾して、立つ足に完全に体重をのせる。
2)1の姿勢から片足だけで立ち上がり、そのまま3秒キープ。勢いや反動をつけないこと。反対の足も同様に。

 

■「レベルアップテスト」標準テストで両足クリアできた人は、床から片足立ち上がり

1)しゃがんで壁に手をつき、壁と反対側の脚を浮かせる。このときしっかり前傾し、壁側の足の前側に体重をのせる。
2)そのまま真っすぐ立ち上がる。転ばないよう、立ち上がるまで手は壁に添えておく。

 

■「レベルダウンテスト」標準テストで両足もしくはどちらか片方の足でクリアできなかった人は、床から両足立ち上がり

1)完全にしゃがみきった姿勢から前傾して足の前側に体重をのせる。
2)反動をつけずに立ち上がる。

 

判定は、「標準テスト」クリア→「レベルアップテスト」クリアでA。「標準テスト」クリア→「レベルアップテスト」をクリアできなかった場合はB。「標準テスト」をクリアできず→「レベルダウンテスト」クリアでC。「標準テスト」をクリアできず→「レベルアップテスト」をクリアできなかった場合はD。

 

【A】貯金残高たっぷり、筋肉長者
しっかり筋肉貯金ができていて、20代男性の標準レベル。今のレベルを維持するため、筋肉貯金をサボらないように。

 

【B】貯金は及第点、中流階級
残高は60代男女の標準で、最低限クリアしておきたいレベル。意識的に筋トレをして、筋肉貯金を作ろう。

 

【C】貯金が心もとなく、先行き不安……
70代男女の標準レベルの筋力。移動機能の低下が始まっている状態。トレーニングで筋肉貯金を再建しよう。

 

【D】残高わずか……筋肉破産が間近!
自立した生活ができなくなるリスクが高い状態。いまからでも取り戻せるので、できることからコツコツ筋肉貯金をしよう。

 

このテストはいずれも下半身を使った動作が中心だが、下半身の筋力の男女差は小さい。60~70代の女性でも、Aの「20代男性」レベルに該当することもありうるそうだ。

 

「たとえ現段階では残高が乏しいC、D判定でも、筋肉を鍛えることによって上を目指すことが十分に可能です。“伸びしろがある”と前向きに捉えてください」(谷本先生)

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