「1年前、会社の健康診断で肺が“要精検”となりました。症状もなかったし、喫煙歴もないので、深刻に思っていませんでしたが、その後、CT検査を受けたら、末期の肺がんが見つかって……。すでに骨に転移して、最近は痛みも出てきましたが、家族の支えでなんとか頑張っています。ただ、いつも頭に浮かぶのは“なぜ”という思いです」(50代会社員女性)
日本人の3人に1人ががんによって死亡している。国立がん研究センターがん情報サービスによると、死亡数が多い部位は、女性の場合、大腸に続いて肺が2位。
芸能界では、野際陽子さんや星由里子さんが肺腺がんで亡くなり、東てる美(62)が闘病生活から復帰したばかりだ。男性では、中村獅童(46)も患ったことが記憶に新しい。国立がん研究センター東病院の呼吸器外科科長の坪井正博先生が語る。
「肺がんは、40代くらいから発症者が徐々に増えだし、70代でピークをむかえます。特に喫煙との関連が大きいと見られているのが、扁平上皮がんと細胞肺がんです。一方、非喫煙女性にも多く、増加傾向にあるといわれるのが、肺の奥や末梢に生じやすい、腺がんです。かつて、肺がん患者の男女比は7対3ほどでしたが、特に腺がんでは女性の比率が同等くらいに増えてきました」
米国ハーバード大学で疫学研究に従事した、内科医の大西睦子先生も、こう解説する。
「’17年、米国インディアナ大学の教授は、アジア女性の肺がん患者の50%が、非喫煙者であることを指摘しています」
30年で罹患者は3倍超、死亡者も2倍になった肺がん。「喫煙しないので関係ない」と思っていた人が肺がんになる。そんな事例が増加しているという。