気象庁によると、東京都心は6月26日~7月16日まで20日連続で、日照が1日3時間未満を記録。’61年の観測開始以来、17日連続で最長記録だった’88年を上回っている。
さらに、7月4~17日までの2週間の関東地方の日照時間は、平年の4割以下。記録的な日照不足が続いている。
異常気候が招く大きな懸念が、9月に収穫のピークを迎える米への影響だ。じつは今年の状況は、’93年によく似ているのだ。
その年、日照不足や長雨による冷夏で米が大凶作になり、価格が高騰。政府がタイや米国などから米を緊急輸入するに至った。あの“平成の米騒動”が起きた年だ。
“令和の米騒動”勃発の危険性はないのだろうか。
「’93年は、東日本の太平洋側、とくに東北地方の大冷害。そして西日本は台風の被害などのために、全国的に冷夏になったことで凶作となりました。しかし今年は、日本海側や西日本で比較的気温が高いなど条件は異なっています」
こう分析するのは、山口大学大学院創成科学研究科・山本晴彦教授(農業環境学)だ。
「問題は東日本です。東海から東京、北関東、東北までの太平洋側の地域は記録的な日照不足が続いている。ちょうど栄養成長期にあたる出穂前に日照不足が続いているので、生育に影響が出ている可能性があります。このような天候がいつまで続くかによって、米の収穫にかなり影響が出てくるでしょう」
山本教授は、凶作になるかならないかは、7月下旬~8月上旬の天候がポイントになると指摘する。
「年間でもっとも気温が高くなるこの時期が低温となった場合、米の生育に大きな影響が出る。’93年の冷夏のときは、8月初旬に青森県内で最低気温が10度を切るような異常な低温がありました。8月以降、東日本でこのような異常低温が起きた場合、凶作となる恐れはあります」
東北や北陸の米どころはもちろん、関東の太平洋側の茨城県、千葉県も相当な米の生産量を誇っている。
この地域の米が凶作になれば、東日本の米の供給は大幅に減り、米不足や米価の高騰が懸念される。
日照不足が続く茨城県のJA全農いばらき米穀部の担当者は、「不安がある」と、次のように語る。
「日照不足と低温が続いたことで、生育が遅れてきているのは間違いないです。これから8月に入っても気象条件が悪い状態が続くと、リカバリーすることが厳しくなり、収穫量が減る可能性があります」
茨城県の米の品種はコシヒカリが8割ほどを占める。多くは8月末から9月末までが収穫時期のピークだという。
日照不足が続き、米の収穫時期が後ろにズレ込んでしまうことを、生産者たちは懸念している。
「われわれには供給責任がありますから、米騒動のようなことがあってはならない。起こしてはならないと思っています。ただ、あまりにも日照不足が続いているので不安はある。毎日生育を注視している状況です」(JA全農いばらき米穀部)
’93年の米騒動では、国産米の市場価格が急騰し、10キロを1万円以上で売る店もあった。米不足状態は、同年9月から’94年の夏ごろまで、約1年も続いた。
すでに始まっている野菜価格の高騰に、秋には米不足の不安……。さらに10月からは消費税が10%に引き上げられる予定だ。野菜高騰は、家計崩壊の前兆にすぎないのかもしれない。