「栄養学では、食品の栄養素を十分に引き出すための調理法や食べ方が新たにわかってきています」
こう話すのは東京慈恵会医科大学附属第三病院栄養部の小沼宗大さん。小沼さんと同部の相木浩子さんは、食材の効果的な取り方をまとめた『長寿ホルモンを増やす!「長寿食材」の選び方と最高の食べ方』(宝島社)を監修した。
「食材にはそれぞれの特徴があり、切り方のほか、油を使って炒める、お湯でゆでるといった調理法、さらには食べる時間帯によっても体内に取り込める栄養素の量や働きが変わります」(小沼さん)
なかには多くの人が常識と考えているものとは異なる例も。そこで2択クイズを出題。“健康長寿をのばす食べ方”はどっち?
【Q1】長寿効果を高めるワカメの食べ方は?
〈味噌汁〉or〈酢の物〉
正解は酢の物。ワカメには健康寿命をのばすホルモン・アディポネクチンの分泌を促す食物繊維やカルシウム、マグネシウムが多く含まれる。ミネラルの摂取率を高めてくれる酢と一緒に食べることで栄養価が倍増する。酢の物の汁まで食べきりたい。
【Q2】肩こりをやわらげるためのかぼちゃの調理法は?
〈油炒め〉or〈煮物〉
正解は油炒め。かぼちゃにはβカロテン、ビタミンB、C、Eが多く含まれており、免疫力アップ、疲労回復、肩こり・冷え性を改善するなどの働きがある。栄養素を効果的に摂取するには、油を使って焼く・炒めるなどの調理をしよう。ビタミンEの吸収率が生食の6倍になる。
【Q3】玉ねぎや長ねぎの血行促進作用を高めるには?
〈切ってから15分放置〉or〈すぐに食べる〉
正解は切ってから15分放置。玉ねぎや長ねぎには血行促進作用のあるアリシンが含まれている。
「細かく刻んだり、すりおろすことで空気に触れる部分を増やし、さらに10〜20分放置するとアリシンの量が最大限に増えます。成分を丸ごと取るためにも、生食をおすすめします」(相木さん)
【Q4】アサリの貧血予防効果を高めるには?
〈生を調理〉or〈缶詰〉
正解は缶詰。貧血回復に必要な鉄、赤血球の生成を促すビタミンB12が豊富なアサリ。
「水煮缶だとビタミンB12は生食を調理した場合8倍に。水煮缶の汁にも栄養素が溶け込んでいるので、アサリの鉄分吸収を促進してくれるトマトなどと一緒にスープにして食べるとより効果的」(相木さん)
【Q5】サンマの血液サラサラ効果を高めるには?
〈グリル〉or〈フライパン〉
正解はフライパン。血液サラサラ効果があるEPA。サンマの脂肪には多くのEPAが含まれているので理想は刺身で食べることだが、調理するときは脂の流出を避けたい。
「グリルを使うとEPAが2割失われてしまいますが、フライパンでは失う脂をその半分に抑えられます」(相木さん)
健康によいとされる食べ物も、調理の仕方ひとつで栄養素の量や働きは大きく変わってくる。
「たとえば、鉄分の多い食材の代表格のヒジキは、昔は鉄釜で蒸し煮していたので、鉄釜から鉄分を吸収していたのですが、今はステンレス製の釜が主流。そのためヒジキの鉄分はじつに約9分の1に減少しています」(相木さん)
健康寿命のためによいとされる食材。そのパワーを余すところなく摂取できるように心がけたい。