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夜、眠れないほどの痛みが続くこともある帯状疱疹。なぜか、ここ数年、急激に増えているという。その理由と予防する方法を詳しい医師に聞きました。

 

「夜、お風呂に入った後、ドライヤーで髪を乾かしていると、頭に爪でひっかかれたようなビリビリした痛みが走ったんです。何かなと思ったんですが、すぐに治るだろうとも思って、その日は何もせず寝ました。でも、翌朝、目が覚めると激痛に変わっていて。すぐに病院で診察してもらったんですが、病名はわからず、処方されたのは痛み止めと軟膏だけでした。しかし、その後も38度の発熱で頭や体は燃えるように熱くなり、冷やしても頭皮の痛みは増すばかり。症状はどんどん悪化していきました。2件目の病院でもわからず、3件目でようやく『帯状疱疹ですね』との診断が。最初に痛みを感じてから丸3日も過ぎてのことでした」

 

自身の体験を話すのは、環境ジャーナリストの村田佳壽子さん。「帯状疱疹」という病名こそ、聞いたことがある人はいるかもしれないが、具体的にどんな病気なのか、知らない人は多いのではないだろうか。村田さんを診断した、中野皮膚科クリニックの山根理恵先生に解説してもらった。

 

「幼少期に水ぼうそうにかかり、体内に侵入した『水痘帯状疱疹ウイルス』は、治った後も体の中に一生、潜伏し続けます。免疫力があるうちは問題ないのですが、加齢に加え、ストレスや疲れで免疫力が低下すると、ウイルスが活動を再開して増殖。これが引き金となり帯状疱疹を発症します」

 

つまり、子どもが最初にかかるのが「水ぼうそう」で、大人になってからなど、その後に発症するのが「帯状疱疹」なのだそう。

 

「帯状疱疹は50代以降、どんどん患者さんの数は増えていき、80歳までに『3人に1人』がかかるといわれています。ですので、昨今の超高齢社会では当然、多くなります。加えて、’14年に子どもの水ぼうそうワクチンの定期接種化が始まったことで、水ぼうそうの流行が激減したことも理由の1つです。これで、大人が水痘帯状疱疹ウイルスへの免疫力に接する機会も減り、ウイルスへの免疫力も弱くなります。それで、患者数が増えているのだと考えられます」

 

前出の村田さんが「激痛に見舞われた」という症状については?

 

「帯状疱疹では、発疹が主に左右どちらかの胸部やおなか、顔、頭部などに、帯状に出ます。最初は違和感や痛みだけで、赤い発疹が出るのは数日後のことが多い。このタイムラグのせいで、筋肉痛や頭痛と勘違いされ、医師に見落とされることも少なくありません」

 

要注意なのは、「顔面麻痺や難聴、視力障害、髄膜炎や脳炎という合併症を引き起こす可能性がある」ことだという。

 

「さらに、1〜2割の患者さんは、発疹が治まった後も、眠れないほどの激痛が続く『帯状疱疹後神経痛』という後遺症になることもあります。慢性化すると、うつを併発してしまう患者さんも少なくないんです。後遺症を減らすためにも、発症してから『72時間以内』に抗ウイルス薬を飲むのが望ましいですね」

 

うーん……こんなに面倒な病気なら、なる前に防ぐ手だてはないのか?

 

「それは第一に、『水ぼうそうワクチン』を接種することですね。子どもへの定期接種で使われるものと同じワクチンが、’16年に50歳以上の大人にも接種できるようになったんです。今のところ、保険適用外ですが、このワクチン接種によって、帯状疱疹を発症する確率は2分の1に、帯状疱疹後神経痛の発症率および重症化は3分の2に抑えられることがわかっています」

 

なるほど、不安で仕方なければワクチンを打ってしまうことか。体の片側にピリピリとした痛みを感じたら、すぐに病院に向かってほしい。

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