「インフルエンザの集団感染や学級閉鎖が相次いでいます。今年は、新型インフルエンザが猛威を振るった’09年に匹敵する速さで感染拡大する恐れがあります」
こう話すのは、環境ジャーナリスト・村田佳壽子さん。東京都は9月26日、都内がインフルエンザの流行期に入ったと発表した。この発表は昨年より2カ月以上も早い。
「1医療機関あたりの報告数が平均1件を超えると、『流行』と判定されますが、すでに沖縄県や九州地方などをはじめ全国9つの都県で『流行』状態。患者数は’19年第38週(9月16日〜22日)の時点で約5,700人にものぼっているんです」
ここ数年の同期報告件数と比較しても、今年は“異例”であることがわかる。毎年12月から翌3月あたりに猛威を振るい、いわゆる「真冬にかかる病気」というイメージがあるインフルエンザ。その常識を覆すような今年の流行の背景とはなんなのだろうかーー。
「今年の夏休みの海外旅行者は300万人近くと過去最高であり、南半球への旅行者も増加しただろうことが挙げられます。オーストラリアやニュージーランドの7〜9月は寒く、インフルエンザの流行時期。現地で感染した旅行者が帰国し、一気に拡散というケースもあったでしょう」
現在日本各地で開催されているラグビーW杯の観戦のため、南半球から多くの観光客が押し寄せ、その往来が例年より多いことも考えられるだろう。
「東京では9月19日に最低気温17.1度と、前日から10度近く下降。しかし10月に入って最高気温30度を記録したりというように、全国的に寒暖差が激しい。気候の不安定さについていけず、免疫力を弱めてしまう人も多いため、さらに患者が増え、例年より早く『警報』が発令される恐れも考えられます」
あけのほし内科クリニック院長・丸山祥司さんは、ウイルスの特徴と対策についてこう語る。
「インフルエンザウイルスは、気温が低いと飛散・拡散しやすいのが特徴ですが、今年の“季節外れの学級閉鎖”に見られるように、気温が高くてもまん延する可能性は十分に考えられます。対策としては、手洗いやうがいはもちろんのこと、人ごみを避けること。仕事や学校行事などに出向く際には必ずマスクを着用してください。水分を十分にとり、のどを清潔に、湿潤環境を保つように心がけましょう」
前出の村田さんは、こうアドバイスしてくれた。
「来る警戒レベルの感染に備え、まずは緑茶、紅茶を飲むことと、予防接種を。そのうえで、外出時には首、手首、足首、おなかを冷やさないようにスカーフやセーターといった『もう1枚羽織るもの』を持参しましょう。寒いと感じたら、すぐに身につけてください」
“まだ寒くないから”とインフル対策を怠るのは命取りになりそう。