手軽にフルーツの栄養を取れる健康的なイメージの果汁100%ジュース。ところが、ゴクゴク飲んでいるとさまざまな疾患のリスクにつながると専門医は警鐘を鳴らす。
《フルーツジュースを飲む人は、死亡リスクが24%上がるーー》
先日、こんな驚きのデータがアメリカの研究機関から報告された。研究は、ハーバード大学の研究チームがアメリカの医療誌『JAMA(The Journal of the American Medical Association)』に発表したもので、甘い飲み物を摂取することと死亡リスクの関連性を1万3,440人の成人を対象に調査したという。
結果は、冒頭のとおり。さらに長期にわたる研究が必要とされるも、「フルーツジュースの摂取と死亡リスクに関連がある」という結論だった。
研究の対象となったフルーツジュースには、果汁100%のものも含まれる。果汁100%のジュースといえば、清涼飲料水などと比べて健康的というイメージが強いので、いささか意外なニュースだ。このことに関して、栄養やダイエットに詳しい、一般社団法人日本ダイエットスペシャリスト協会理事長で医学博士の永田孝行先生は次のように話す。
「たとえ果汁100%のジュースであっても、1日に何杯も飲んでいると糖分の取りすぎを招きます。果物には果糖をはじめ、ブドウ糖、ショ糖などの糖分が含まれており、それはジュースに加工した場合も同様です」
体によいというイメージがあり、手軽に取れることから、毎日飲んでいるという人も多い。
「果糖は本来、血糖値を上げにくく、満腹感を感じさせないもの。さらに甘いため、ジュースになるとついゴクゴクといくらでも飲めてしまいます。じつは、これこそが果汁ジュースの落とし穴なのです」
通常、果糖は小腸で代謝される。そのため、ゆっくりと糖が分解されて、血糖値を上げず、インスリンの分泌も抑えられる。ところが、一度に大量の果糖を摂取すると、小腸では十分に処理しきれずに肝臓へ流れこみ、肝臓に負担をかけてしまう。これを慢性的に繰り返していると脂肪肝の原因にもなるという。
では、果物自体も健康を害するリスクをはらんでいるということなのだろうか。
「たしかに果物にも果糖は含まれていますが、1個当たりの果糖含有量を見るとたいしたことはありません。たとえば、みかん1個を搾ったところでせいぜい果汁は数十ml程度です。果物から200mlの果汁を取ろうと思ったら、食べきるのが大変な量になってしまいます。また、果物にはビタミンやミネラル、食物繊維など、さまざまな栄養がバランスよく含まれています。ですから、デザートに果物を食べることは理にかなっているのです」
市販されている果汁100%ジュースの多くは「濃縮還元」という製法によるものだ。濃縮還元のジュースは、輸送しやすくするために果汁を搾ったジュースを加熱濃縮することで水分を飛ばしてペースト状にし、移送した後に再び水分を加えて作る。加熱濃縮されてコンパクトになった濃縮還元のジュースのほとんどは海外から輸入されたものだという。私たちが日ごろ飲んでいる果汁100%ジュースの多くは、この濃縮還元製法によるジュースだ。
「“果汁100%”をうたっていても、国内で水分を加える際に果糖ブドウ糖液糖などの生成された異性化糖を添加する場合があります。パッケージに『砂糖』や『ブドウ糖果糖液糖』などが表記されていれば、何らかの糖が添加されています。しかも、果物に含まれていた食物繊維は搾汁でほぼ取り除かれ、ビタミンやミネラルは加熱処理される過程で壊れてしまいます。このように、果実と果汁ジュースでは、栄養のバランスがまったく違ったものになっているのです。果汁100%のジュースであっても、1日に飲む量はコップ1杯程度にとどめておいたほうがよいでしょう」
思わぬ病気のリスクを避けるためにも、くれぐれも飲みすぎには注意しよう。