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「コロナ禍で夫の在宅ワークが多くなり、家で顔を突き合わせている時間が長くなった方も多いでしょう。でも家事はいっこうにやってくれないし、“頼られすぎ”もキツいですよね。いっそ『自分が外に働きに出てしまう』というのも得策です」

 

こう話すのは、社会保険労務士でファイナンシャルプランナーの中村薫さん。

 

「そもそも、夫が在宅勤務できている状況はいいほうで、来年以降はいよいよコロナ不況が本格化するともいわれています。現在の雇用状況がいつまで続くかは未知数ですから、主婦も働く時間、つまり“稼ぐ時間”を積極的に増やさなければならなくなるでしょう」

 

そこで気になるのは、1日何時間、あるいは週何日、働くのがいちばんお得なのか? というパート収入と、税金などとの関係。よく聞くのは「103万円の壁」という言葉だけど、たまに「106万円の壁」とか「130万円の壁」とかの「パート収入の壁」も耳にする。

 

さっそく中村さんに「パートの年収」の損得ラインについて解説してもらった。

 

「『103万円の壁』『106万円の壁』『130万円の壁』の『壁』はそれぞれ違うので、区別して把握しましょう」

 

最初は「103万円の壁」から。

 

「年収に対して所得税がかかってくるのが『103万円』から。基礎控除48万円、給与所得控除55万円の合計『103万円』を超える収入は所得税の課税対象となるのです」

 

当然、課税されるのは103万円を超えた分のみ。

 

「たとえば年収110万円だった場合は、110万円から103万円を引いた『7万円』に課税されるだけなので、大きな影響はなく、『怖くない、気にしなくていい壁』と覚えておいていいでしょう」

 

次に「130万円の壁」について。

 

夫が会社員(第2号被保険者)で、妻が専業主婦(第3号被保険者)の場合、妻は夫の社会保険(厚生年金と健康保険)の「扶養」となっているため、国民年金と国民健康保険料を納めることもない。

 

「しかし、妻がパートなどで働きに出る場合、その年収が130万円を超えると、夫の社会保険の扶養から外れ、第1号被保険者として、自分が国民年金と国民健康保険に加入し、保険料を支払わなければならなくなります。収入の上昇分を保険料の納入額が上回る場合があり、これが『130万円の壁』といわれるものです」

 

さらに「106万円の壁」もあるという。

 

「パートで働く会社の規模が『従業員数501人以上』で、『週20時間以上勤務』『1年以上勤務の見込み』があり、『学生ではない』……などの条件がそろうと、月収8万8,000円(=年収106万円)以上、自分が第2号被保険者として社会保険(厚生年金と健康保険)に加入することになり、夫の社会保険の扶養から外れます。この場合にも、収入の上がり具合より保険料の納入額が上回ることがあり、『106万円の壁』となるのです」

 

この「106万円」と「130万円」の差は大きい。働く会社を決めるときには従業員数が「501人以上」か「500人以下」かをチェックするのがマストだ。

 

ところで、パートで働くときに考えるのは「1日何時間×週何日働くか」の掛け合わせだろう。そこから年収が導き出せる時給別「パートの年収」を次にまとめたので、該当する時給のところを見てほしい。

 

■1日8時間×週○日働く場合のパート収入

 

【時給800円】

5日=160万円/4日=128万円/3日=96万円/2日=64万円/1日=32万円

 

【時給900円】

5日=180万円/4日=144万円(※1)/3日=108万円(※2)/2日=72万円/1日=36万円

 

【時給1,000円】

5日=200万円/4日=160万円/3日=120万円(※2)/2日=80万円/1日=40万円

 

【時給1,100円】

5日=220万円/4日=176万円/3日=132万円(※1)/2日=88万円/1日=44万円

 

【時給1,200円】

5日=240万円/4日=192万円/3日=144万円(※1)/2日=96万円/1日=48万円

 

■1日○時間×週5日働く場合のパート年収

 

【時給800円】

7時間=140万円(※1)/6時間=120万円(※2)/5時間=100万円/4時間=80万円/3時間=60万円/2時間=40万円

 

【時給900円】

7時間=157.5万円/6時間=135万円(※1)/5時間=112.5万円(※2)/4時間=90万円/3時間=67.5万円/2時間=45万円

 

【時給1,000円】

7時間=175万円/6時間=150万円/5時間=125万円/4時間=100万円/3時間=75万円/2時間=50万円

 

【時給1,100円】

7時間=192.5万円/6時間=165万円/5時間=137.5万円(※1)/4時間=110万円(※2)/3時間=82.5万円/2時間=55万円

 

【時給1,200円】

7時間=210万円/6時間=180万円/5時間=150万円(※1)/4時間=120万円(※2)/3時間=90万円/2時間=60万円

 

※1:500人以下の会社で“損する”感
※2:501人以上の会社で“損する”感

 

1日8時間、時給900円で働く場合、週4日の勤務なら「年収144万円」となり、500人以下の会社では「130万円の壁」に当たって“損する”感が出る。週3日の勤務では「年収108万円」となり、501人以上の会社では「106万円の壁」に当たって“損する”感が出ることとなる。

 

また、週に5日、時給900円で働く場合、1日6時間勤務なら年収135万円で「130万円の壁」に、5時間勤務なら112.5万円で「106万円の壁」に当たる。

 

「現状で“損する”感にいる方は、だからといって『106万円以下』『130万円以下』に抑えて働くべきではないと思います。今後を考えればむしろ、500人以下の会社で勤務しているなら『155万円以上』、働ける可能性があるなら、一気に飛び越えて、収入拡大を図ったほうがいいでしょう」

 

そして「やはりコロナ不況の先を読むべきだ」と中村さん。

 

「営業利益が減り、会社の経営が厳しくなれば、派遣社員などの非正規社員がシフトから外されるなど、イレギュラーな対応をされる可能性も考えられます。また、時短勤務や交代制などが導入されても、正社員には休業補償がある場合も多いので安心です。もしチャンスがあるのならば、積極的に『正社員雇用』を狙うべき。少しずつでも勤務実績を積み、信頼度を高めることも重要です。アフターコロナでは、『エンプロイアビリティ』つまり『雇われ続ける能力』が大事になってくると考えます」

 

秋からにでも「収入拡大」する方向で、自らの“働き方改革”をしてみよう!

 

「女性自身」2020年9月1日 掲載

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