今年も年末調整シーズン! 「去年と変わらないでしょ?」と思っているそこのあなた、もしかしたら払いすぎているかも。そこで、今年の年末調整で注目のポイントを経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれたーー!
■子育てや介護をする人への緩和措置も
’20年は、基礎控除の引き上げなど、税制改正がありました。控除とは「差し引く」こと。納税額は、各種控除で決まった金額を差し引いて、計算します。
たとえば、基礎控除や給与所得控除などを、収入から差し引いた後、税率をかけて納税額を計算します。つまり、控除額が増えると納税額は減る。控除の有無で納税額は大きくかわります。
会社勤めの方はこの時期、3枚の用紙が配られ、扶養する家族や加入中の民間保険について記載し、会社に提出します。会社はこれらの書類から納税額を確定させ、多く払いすぎている場合は返金し、少なければ追加徴収します。控除のチェックが漏れると、税金を払いすぎてしまうこともあります。’20年の変更点を確認しましょう。
■公的年金等控除の引き下げ
公的年金を受け取る方には、公的年金等控除があります。これは基礎控除が10万円引き上げになった分、10万円引き下げられました。一般的な年金額の方は、基礎控除+公的年金等控除は’19年までと変わりません。
■ひとり親控除の創設
‘19年までは、結婚後に死別・離別して子どもなどを養育する女性には寡婦控除や特別寡婦控除、男性には寡夫控除がありました。
しかし、未婚のまま子どもを産み育てる方は適用されない、男女で収入条件などが違うといった不平等があったため、’20年からは「ひとり親控除」を創設。寡夫控除と特別寡婦控除は廃止され、寡婦控除だけは、収入要件を追加する形で残りました。
ひとり親控除は、婚姻歴にかかわらず、また男女の区別もなく、ひとり親として子どもを育てる所得500円以下(会社員の年収では678万円相当)の方が対象です。35万円が控除されます。
また、’20年からの寡婦控除は、結婚後に死別・離別して老親など子ども以外を扶養する女性、結婚後に死別して扶養親族はいないが年収500万円以下の女性を対象として、27万円が控除されます。
■配偶者控除の見直し
配偶者控除・配偶者特別控除では、妻の年収が103万円以下の場合、夫の収入から最大38万円控除されます(男女が入れ替わってもOK)。また、妻の年収が150万円を超えても201万6,000円以下なら、夫の控除額が段階的に下がっていく配偶者特別控除を受けられます。
配偶者控除の対象は、正式には年収ではなく、妻の所得で決まります。’20年からは、この対象所得が10万円引き上げになりました。
所得とは、パートなどお勤めの場合、年収から給与所得控除を引いたもの。’20年から基礎控除が10万上がった分、給与所得控除は10万円引き下げられました。年収850万円超の方以外は、基礎控除と給与所得控除を合わせるとプラスマイナスゼロ。妻の年収で考えた場合の“150万円の壁”は変わりません。
配偶者特別控除も同様、妻の対象所得が10万円上がりますが、201万6,000円以下が控除対象になるという基準は結果的に変わります。
ここまで年末調整について見てきましたが、会社員でも、確定申告が必要な方もいます。
たとえば、2カ所以上から給料を受け取る方や、副業で経費などを除いた所得が20万円を超える方などです。副業やダブルワークを行う方は注意してください。
また、確定申告をしたほうが節税になって得する方もいます。たとえば、医療費をたくさん使った方は「医療費控除」、地震や台風、盗難などの被害を受けた方は「雑損控除」など、確定申告不要の「ワンストップ特例制度」を利用せずにふるさと納税を行った方は「寄付金控除」が利用できます。
先述のとおり、控除が増えると納税額が減り、払いすぎた税金が戻ってきます。面倒がらずに確定申告をしましょう。年末調整でチェック漏れがあった場合も確定申告すれば、計算をやり直し、税金の払いすぎがあれば返金されます。
また、年末調整の書類を提出してから年末までに結婚や出産などで家族構成が変わった方は、ぜひ確定申告してください。納税額は12月31日時点の状況で決まります。子どもが12月31日に生まれたとしても、申告すれば、扶養控除が1年分認められ節税できます。
「女性自身」2020年12月1日・8日合併号 掲載