夫婦や家族の絆をはぐくむはずの空間がいつしか、いさかいを生む場所に……!? コロナ禍の今、加速する片づけブームがはらむ問題点をもとに、幸せになれる部屋づくりの心得を、“予約の取れないカリスマ家政婦”が教えますーー!
コロナ禍に突入し2度目の大型連休を迎えた今、おうち時間の増加も相まって、世の“片づけ熱”はますます高まっている。SNSや雑誌で見たあの部屋・あの暮らしを目指すべく、この連休を片づけや整理整頓に費やす予定の人も多いだろう。
「住まいを清潔に美しく整えるのは、とても大切なこと。でも、ちょっとだけ待って。あなたのその片づけ、本当に必要ですか?」
そう話すのは、家族の片づけコンサルタントのseaさん。家事代行サービスに携わって20年あまり、延べ6,500件もの家庭の片づけ問題をサポートしてきた実績を持つ、プロ中のプロだ。
seaさんによると最近、部屋が片づけられてきれいになるほどに夫婦や家族関係をうまく保てなくなるという、不可解(?)な現象が多く起きているという。
汚く、乱れた部屋というのならわかるが、実際、片づけのことで日常的な争いが絶えず、悩んで相談にくるのは圧倒的に“そこそこ片づいた”部屋の住人たちが占めるというから驚きだ。
「お宅にお邪魔すると、それこそモデルルームのようにきれいで片づいた部屋に住んでいる方もいます。ですが、詳しく話をうかがうと、夫婦のどちらか一方が『自分が必死で片づけているから現状が保てている』と主張されるケースが非常に多いんです。そしてたいていは、『自分はこんなにがんばっているのに、パートナーや家族は何もやらない』と不満やストレスを抱えています。また、はやりの収納法を次々と取り入れ工夫しているのに家族の協力が得られない、というケースも同様です。こう聞くと、“やらない側”が悪いように思われがちですが、そうとも限りません。その相手も、自分と異なる価値観を押しつけられ、断ったり、言われたとおりにできないと、毎回怒られたり機嫌を悪くされることに、同じようにストレスを抱えているのです。互いに苦しい状況が続くと、つい相手を否定、攻撃、拒絶しがちになる……つまり険悪なケンカを引き起こしてしまうんですね」
お悩み解決に向けてseaさんが実際にアドバイスしている「気持ちの切り替え方」を3つ教えてもらった。
【1】譲ってもいいラインを考える
0か100かで考えず、譲れるところは譲るのがコツ。先にここを整理してから話し合うと、10や20の小さな変化でも、ポジティブに受け止めやすい。
【2】相手に決定させて巻き込む
人は自分自身で決めたことは守ろうとするもの。「ここに置け」ではなく、「ここか、そこか、あっちだったらどこがよさそう?」と投げかけ、「だったら、そこかな」と相手に決めてもらいながら進めると、習慣づきやすい。
【3】変化を恐れない
主婦の場合、キッチンやダイニングテーブルを自分の聖域と考えている人は多い。そこを今までどおりに使えなくなったとしても“相手も変わるなら私も変わろう”と前向きに受け止め、新しい生活のお気に入りを探すほうがうまくいく。
もちろん、ちょっとした工夫で「イライラが生まれにくい部屋」にする“テクニック”もある。まずは次の4つのポイントを。
【1】くつろぐ場所の視界から“ごちゃごちゃ”を排除 → 収納スペースは背中側に設ける
男性は特に“ソファに座ってテレビを見る”際、画面以外の余計な情報が視界に入るとイライラしやすい。本や日用雑貨などの収納は背面にし、テレビの左右はすっきりを保って。
【2】収納できないのは“定位置”に無理がある → リビングダイニング(LD)の出入口にアウター1着、バッグ1個を許容
ものが積み重なるのは、“その決められた場所にしまうのが大変”のサイン。LDなど必ず立ち寄る部屋の出入口に、各1アイテムまでOKの中継点を設けることで、逆に片づけられる場合も。
【3】出しっぱなしの原因は収納場所が遠いから → “使う場所のすぐ近くに収納”が基本
ものが散らばっている場所をよく観察し、そこから手を伸ばせば取れる位置に収納を設ける。即使えれば、即しまう習慣が身につくことも多い。同様に、ゴミの多い場所にはミニゴミ箱を。
【4】ダイニングテーブルは縄張り争いが起きやすい → まっさらな状態を保つ
テーブルは中立エリア。個人の私物は、作業後すべて“とりあえず”ボックスにしまっていったんリセットすることで、互いに縄張り意識が消え、オンとオフの切り替えもしやすくなる。
さらには、行動を妨げるものを動線上に置かない(通る際に大きくまたいだり、避けなければいけないものは移動させる)、“今ここにあるべきではないもの”を片づける(もうやっていない編み物セットや筋トレグッズなどは、目障りに思うもの。また、家事グッズが放置されている、くつろぎたいソファの上に洗濯ものがどさっと置いてある状況の改善)など、すぐに実践できるものも多い。
いずれにしても、相手を思いやる気持ちが、きれいな部屋をつくるすべての近道だといえる。この連休は、夫婦の、夫婦による、夫婦のための片づけで、大いなる幸せを呼び込もう。
「女性自身」2021年5月11日・18日合併号 掲載