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「老後の生活不安を解消するためにも、実際に使えるお金である年金の手取り額を把握しておくことがとても重要です。ところが、自分が受け取るはずの手取り額を知っている人は思いのほか少ないのです」

 

そう話すのは、社会保険労務士で年金制度に詳しい「年金博士」こと北村庄吾さんだ。50歳以上の人に届く「ねんきん定期便」の「見込み額」を見て、自分の年金額をわかったと思い込んでいる人は要注意だという。

 

「60歳まで同額の保険料を払うことを前提にした『見込み額』は、給与明細でいうところの額面です。実際の手取り額は、そこから税金(所得税と住民税)と社会保険料(国民健康保険料と介護保険料)を引いた額になります」

 

実は“額面”に対する手取り額の割合が、この22年間で大きく減っている。ファイナンシャル・プランナーの深田晶恵さんが語る。

 

「年金300万円の額面のケースで、介護保険が導入される前の’99年と’21年を比較したところ、手取り額に37万円の差がありました。’00年から介護保険料がかかるようになり、さらにその後65歳以上の人や税金も増えたため、手取り額が目減りしてしまったのです」

 

そんな社会保険料は、地域ごとに差がある。北村さんが解説する。

 

「年金収入だけの生活に入ると、厚生年金保険料はかからず、国民健康保険料と介護保険料の2つが引かれます。これら社会保険料は、その地域の財政状況や高齢化率などによって大きく異なってきます。住んでいる場所によって年金の手取り額がかなり変わってくるのです」

 

そこで北村さんが代表を務めるブレイン社会保険労務士法人の山岡正和さん、伊藤紀代美さんに、夫婦で“受給額(額面)”が160万円(夫・80万、妻・80万円)、260万円(夫・180万円、妻・80万円)、420万円(夫・260万円、妻・160万円)という3つのケースで、複数の自治体の年金の手取り額を試算してもらった。

 

■都庁のある東京の中心・東京都新宿区

 

夫婦の額面・〈年額:160万円〉
手取り額(概算)・〈年額:145万7,600円〉
夫婦の額面・〈月額・13万3,333円〉
手取り額(概算):〈月額・12万1,467円〉
【手取り率:91.1%】

 

夫婦の額面・〈年額:260万円〉
手取り額(概算)・〈年額:243万1,842円〉
夫婦の額面・〈月額・21万6,667円〉
手取り額(概算):〈月額・20万2,654円〉
【手取り率:93.5%】

 

夫婦の額面・〈年額:420万円〉
手取り額(概算)・〈年額:376万2,244円〉
夫婦の額面・〈月額・35万円〉
手取り額(概算):〈月額・31万3,520円〉
【手取り率:89.5%】

 

■財政危機にある天下の台所・大阪府大阪市

 

夫婦の額面・〈年額:160万円〉
手取り額(概算)・〈年額:142万6,865円〉
夫婦の額面・〈月額・13万3,333円〉
手取り額(概算):〈月額・11万8,905円〉
【手取り率:89.2%】

 

夫婦の額面・〈年額:260万円〉
手取り額(概算)・〈年額:239万6,841円〉
夫婦の額面・〈月額・21万6,667円〉
手取り額(概算):〈月額・19万9,737円〉
【手取り率:92.2%】

 

夫婦の額面・〈年額:420万円〉
手取り額(概算)・〈年額:370万318円〉
夫婦の額面・〈月額・35万円〉
手取り額(概算):〈月額・30万8,835円〉
【手取り率:88.1%】

 

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