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テレビや動画配信サイトに見入って、1時間以上動かないこともザラ……。そんな習慣がある人は要注意。重大な疾患のリスクがみるみる上昇していますーー!

 

「長引くコロナ禍で、自宅のソファに座ったままの時間が増えたという方も多いでしょう。しかし、座っている時間が長引くと『死亡リスク』が増すということは最新の研究でも明らかになっており、注意が必要です」

 

こう話すのは、京都府立医科大学講師の小山晃英先生(公衆衛生学)。

 

コロナ禍での“不要不急の外出自粛”や、在宅ワークの増加などの影響から、気づかぬうちにじっとしている機会が増えていないだろうか?こうした“座りすぎ”が健康を維持するうえでよくないということは以前から指摘されてきた。

 

「座っている時間と病気や死亡リスクとの関連性は、これまでWHO(世界保健機関)の調査で報告されています。では、“世界一座っている時間が長い”ともされている私たち日本人にとって“座りすぎ”がどれだけ“死亡リスク”を高めてしまうのか。それを示したいと考えていました」(小山先生・以下同)

 

’05年から行われてきた小山先生らの研究は、全国10カ所以上の地域で、平均年齢50代半ば、計6万人以上の人を解析対象とした調査だ。

 

「1日のうち、座っている時間の累計が5時間未満の群、5~7時間の群、7~9時間の群、9時間以上の群と、参加者を4群に分けて集計しました。その結果、日中の『座っている時間が2時間増えるごとに、死亡リスクは15.3%増加する』ことが確認されたのです」

 

小山先生が言う、「座っている時間が2時間増えたとき」の「死亡リスクの増加」をまとめたものが次になる。

 

【日中の座位時間が2時間増えることで増加する死亡率の割合】

全体:15%
脂質異常症有り:18%
高血圧有り:20%
糖尿病有り:27%

※出典/京都府立医科大学プレスリリース

 

「飲酒や喫煙の習慣、身体活動量、基礎疾患の有無など、死亡リスクに影響しうる項目を調整して解析・算出したところ得られたのが、全体で『2時間長くなるごとに死亡リスクが約15%増加する』という結論です」

 

基礎疾患のある群をみていくと、死亡リスクはいっそう増加していることがわかる。糖尿病を患っている人では、日中座っている時間が2時間長くなると、死亡リスクが27%も増加してしまうという結果に。

 

ところで、座りすぎが招く「死亡リスク」とは、実際にはどんな状態になることを指し、何を引き起こすものなのだろうか?

 

「長時間座っていることは、“体を動かしていない状態”が長く続くこと。このとき、血行は滞ります。さらに、足の筋肉が使われない状態が長く続くことで、代謝の低下を招きます。これらが原因となり、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった『基礎疾患』といわれる生活習慣病のほか、心臓病、脳卒中などの循環器疾患、さらには『がん』リスクが高まります。結果的に、寿命を縮めることにつながってしまうのです」

 

これら重い病気のリスクはもちろん、日ごろ多くの人が悩みがちな「腰痛」や「肩こり」などの慢性的な痛みにもつながることがあると小山先生は言う。

 

さらに、今回の研究で明らかになった恐ろしい事実がもうひとつある。どうしても日中は座っている時間が長くなってしまう人が、対策として定期的な運動を心がけても、座りすぎで上昇した死亡リスクを相殺することはほとんどできない、ということだ。

 

小山先生は「余暇の運動量」の増減によって、死亡リスクがどれだけ変化するかも調査した。

 

「もっとも日ごろの運動量が多いケースでも、死亡リスクはわずか『3%』程度しか下がっていませんでした。つまり、かなり運動をしていたのであっても、座りすぎの死亡リスクを十分抑えるには至らないことがわかったのです」

 

ウオーキングを日課にしていたり、定期的にスポーツジムに通っていたり、そういった一見健康な生活を送っているように思える人でも、“座りすぎ”が習慣化していては、高い死亡リスクを招いてしまうのだ。

 

じつに困った……。いったい、どうすればいいんでしょう、小山先生?

 

「とにかく、『座り続ける時間を減らすこと』、そして『座っていても体を動かすこと』しかないのです。体を動かさないでいる時間が長くならないように、日ごろから心がけてください」

 

とはいっても、座る時間をごっそり削るのは難しいという人もいるだろう。小山先生が、今日からできる“座りすぎ死亡リスク”軽減ワザを教えてくれた。

 

【青竹踏み】

100円ショップでも購入できる青竹を、意識的に踏むようにする。

 

【貧乏ゆすり】

行儀が悪いとされる貧乏ゆすりも、血流低下を防ぐのには効果的。

 

【両手を組んで背伸び】

“ほとんど動いていない状態”を、背伸びでこまめにリセットする。

 

【スタンディングデスクでテレワーク】

座ってパソコンに向かう、という常識を見直してみるのも一つの手。

 

「簡単なことでいいのです。100円ショップで売っているような青竹を踏む、とか、“貧乏ゆすり”をするなんていうのでもいい。両手を組んで頭上に上げて、体をピンと伸ばして背伸びするのでもいいですね」

 

これらを、座り続けている時間のなかで、「30分に1度、1分間ぐらい」を目安に、取り入れてほしいという。

 

「筋肉を動かすことで、血流がよくなります。基礎代謝が増えることにもつながるでしょう」

 

また、家でもデスクワークが長時間になる場合などは、机自体を「スタンディングデスク」にするのも一つの手だ。

 

「私は、スタンディングデスクの前で立って仕事しているときは、ずっと青竹を踏むように心がけています(笑)。『座っている』=『座位行動』自体は“減らしたほうがいい生活習慣”だと捉えて、何らかの形で体を動かすことを心がけてください」

 

テレビやスマホを見ながらじっと動かないクセがある人、太ってしまうだけでなく、寿命も縮めてしまいますよ!

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