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「1月21日、’22年度の年金受給額が’21年度比0.4%引き下げとなることを厚生労働省が発表しました。4月分から、国民年金(満額)は月額6万5,075円から259円減額、夫婦2人の厚生年金(国民年金を含む)は、モデル世帯(平均的な給与で40年間働いた会社員夫と専業主婦という世帯)で22万496円から903円減額されます。厚生年金の場合、年間1万836円も減ってしまうのです」(生活経済ジャーナリストの柏木理佳さん)

 

政府が“100年安心”とアピールする年金だが、なぜ減額されるのか。経済評論家の平野和之さんは、こう解説する。

 

「年金の受給額は物価や現役世代の賃金の動きに応じて毎年度変わっています。’21年度の物価は前年比0.2%減で、過去3年間平均の名目賃金変動率が0.4%減。今回は賃金の変動率が優先され、0.4%の減額となりました。コロナ禍によって旅行業界や飲食業界などサービス業を中心に業績が悪化した企業が増えたことが今回の減額の主要因でしょう」

 

年金減額は、今後もさまざまな理由で行われるという。

 

「もともとは、賃金や物価の上昇に伴い、年金の受給額も上がっていました。しかし、現在は少子高齢化のため、受給額を大きく上げると現役世代の負担がとても重くなってしまいます。それを防ぐために、’04年からマクロ経済スライドという仕組みが導入されているのです。スライド調整率というものを設定し、その分を年金の改定率から引くという仕組みです。そのため、年金の上昇分は、賃金や物価の上昇分に満たず、実質的に減額となります」(平野さん)

 

ただし、マクロ経済スライドは、今年のように年金額が減少する際などには、発動されない。

 

しかし、その分は、翌年度以降に繰り越されるので、今後仮に賃金(物価)が上がっても、繰り越されたマクロ経済スライド調整率が差し引かれるため、年金はほとんど上がらないのだ。

 

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