一度医師から処方箋をもらえば、その後2回まで診察なしで薬を受け取れる“リフィル処方箋”。便利な一方、病状悪化の懸念も。使いこなすためのポイントを聞いた――。
「処方箋の制度が、この4月から変わっていることは、あまり知られていません。処方箋を繰り返し使える『リフィル処方箋』制度が導入されているのです」
そう語るのは、薬剤師の宇多川久美子さん。「リフィル処方箋」とはどんなものなのか?
「リフィルとは“詰め替える” “再び満たす”という意味です。本来、医師から薬の処方を受けるためには、毎回診察を受ける必要があります。しかし、リフィル処方箋なら、一度診察を受ければ、医師の診察がなくても最大3回まで薬局で薬を受け取ることができるのです。アメリカでは’51年から導入されていて、欧米各国ではすでになじみのある制度。日本でも、患者と医療との関わり方を変える一歩と期待されています」
患者にとっては症状や体調に変化がないのに薬をもらうためだけに受診する“お薬受診”の回数が減らせるのが大きなメリットだ。
「リフィル処方箋を利用すれば、診察を受けずに、近くの調剤薬局に行って薬を受け取ることができます。お薬をもらうために、交通費と時間をかけて病院に行き、長時間待たされて、ようやく診察が始まったら『変わりありませんね』とあっという間に診察は終了。いつもと同じ薬が処方される……。このような負担が軽くなる患者は少なくありません」(宇多川さん)
健康保険組合連合会が診療報酬明細書を分析したところ、半年以上処方箋の内容が同じ患者の割合は、40~64歳で12.1%、65歳以上で15.3%にのぼる。
■診察回数が減ると病状悪化の可能性も
リフィル処方箋は、どのような人が使うことができるのだろうか。
「高血圧や糖尿病、アレルギーなど慢性疾患の症状が安定している患者が対象です。患者の症状をみた医師の医学的な判断で、リフィル処方箋を使うことができます。ただし湿布薬、投与量に限りがある一部の向精神薬、麻薬や新薬は対象外。最終的には医師が決めますが、利用したい場合は、患者側から『リフィル処方箋』を使えるかどうかを聞いてみてください」(厚生労働省保険局の担当者)
病院に行かなくても薬を受け取れるリフィル処方箋だが、いつでも調剤してもらえるわけではない。処方箋の有効期限は、1回目の調剤が4日以内。2回目以降の調剤は投薬期間から“調剤予定日”が決められ、その前後7日以内に行わなければいけないので注意が必要だ。
“お薬受診”をする患者には、メリットばかりのような気がするリフィル処方箋だが、医師は“病状悪化”のリスクを指摘する。
「診察回数が減ることで、患者さんの微妙な変化を感じ取りにくくなる可能性があります」
そう語るのは「ファミリークリニックこころ」(札幌市)の院長、中木村繁医師。
「たしかにふだんの診察時間は限られます。けれどそのなかでも私たちは、患者さんが入室してきたときの動きや表情、声の力や感じ、何か隠している症状はないかなど確認したうえで、最終的に同じ処方をしているケースも多いです。患者さんにささいな変化があれば、それに合わせて薬を変えることもあります。リフィル処方箋によって、患者さんの症状悪化の変化を見つける機会が減ってしまうことが危惧されるのです」