「うちは、相続放棄をかなり前からしているので、興味ないですね」
6月26日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)に出演していた長嶋一茂氏が、実家の相続についてこう言い切ったーー。しかし、この発言を聞いて「生前に相続放棄ってできるの?」と思った人もいるのではないだろうか。
相続問題にも詳しい行政書士の塩崎由花里さんはこう指摘する。
「相続放棄とは、『人が亡くなったときから始まる手続き』です。しかし、相続放棄という言葉には、勘違いや誤解も生じやすいのです」
実際に、勘違いから起こったトラブルをもとに相続放棄について学んでいこう。
【ケース1】放棄宣言を撤回された
《不動産や預貯金などの、ある程度の財産のある親が先日亡くなりました。その際、以前から『自分は相続放棄した』と宣言していた兄が突然、『やはり財産をもらう』と発言を撤回し、私と弟はびっくり。『いらないって言ったクセに!』と不穏な空気が流れています》(東京都・主婦・60代)
「生前の相続放棄(宣言)は法的に効力がありません。この場合、兄は相続放棄しているわけではないのです」(塩崎さん・以下同)
つまり、冒頭の長嶋一茂氏も、現状では相続放棄できていないということになる。
では、今回のケースの場合はどうなるのだろう。
「相続放棄とは、親などの相続される人の死後、財産に関する相続権の一切を放棄すること。なので、まだ親などの被相続人が生きているときから、相続人が『自分は相続を放棄します』と、宣言していたとしても、法的効力はありません。今回のように、『やはりもらいます』と言っても認められます」
今回のケースでは、きょうだい仲はこじれるかもしれないが、相続人全員で遺産分割の協議をするしかない。
親に借金などの「負の遺産」があった場合も同様だ。
「勘当されたり、大げんかして絶縁したと思っていても、法的な手続きを踏まない限り相続放棄はできません。その場合、親の借金なども相続することになります」
縁を切ったはずの親の借金を支払わねばならないこともあるのだ。