国民年金や介護保険料に続き、高齢者の負担が増えることに……(写真:アフロ) 画像を見る

昨年10月に一定以上の所得がある後期高齢者の医療費窓口負担が1割から2割に引き上げられたばかりだが、今度は年収が153万円を超える後期高齢者の医療保険料が上がることになる。2月10日に閣議決定された健康保険法などの改正案によると、今年4月から50万円に引き上げられる「出産育児一時金」の財源を、現役世代だけでなく、75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度からも捻出するという。

 

「医療費の負担をめぐり、現役世代に負担が偏っている点が問題視されてきました。今回の改正を政府は『全世代型社会保障法案』と呼んでいます。後期高齢者にも保険料を負担してもらいますよ、という意味ですが、高齢者の年金収入が減ることにつながるので問題です」

 

そう警鐘を鳴らすのは、淑徳大学の結城康博教授(社会福祉学)。

 

新制度に移行後は、最終的に後期高齢者の約4割(700万人)が対象になる。厚生労働省の資料によると、出産一時金を47万円(5万円引き上げ)と仮定して試算すると、一時金全体の7%を後期高齢者が支援する仕組みになる。具体的に収める保険料の上限は、年収200万円の人は3千900円増の年9万700円、年収400万円は1万4千200円増の年23万1千500円となる(令和6年度)。

 

「食料品や物の値段だけでなく、光熱費も上がり続けるなか、年金収入が減ることは後期高齢者の子どもの世代にあたる40、50代が負担を強いられることにつながります」(結城教授・以下同)

 

年金収入だけでは生活が成り立たないという高齢者は多い。生活が苦しく、病気にかかったときの医療費や介護の費用を子どもが負担せざるをえない状況になると、子ども世代の貯蓄が減って、生活がひっ迫しかねない。このほかにも、国民年金の保険料を支払う期間を40年から45年に延長、介護保険料の自己負担2割の対象を拡大するといった社会保険の負担増が検討されている。

 

「高齢者の『収入』をターゲットに保険料負担や自己負担の割合を引き上げても、財源への効果は限定的です。むしろ、子ども世代にしわ寄せがいくだけなのでマイナスです」

 

人生100年時代、老後が延びたことで生活費が足りなくなる“長生きリスク”の人が続出することにもなりかねない。またしても国民に十分な説明がないまま、生活に関わる大事な法案が強行突破されようとしている。

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