人に物を手渡すときなど、差し出した自分の手の甲を見て、「血管がボコボコ」であることに愕然とした経験はないだろうか? 40代以降、多くの女性が悩みを抱えているのがこの「老け手」だ。
「顔や首は鏡を見なければわからないのですが、手はしょっちゅう目に入るので、気になって仕方がないという声をよく聞きます。そもそも、手は心臓より下にあることが多く、運ばれた血液などが心臓へ十分に戻りにくく、むくんでしまいがちな部位です」
そう解説するのは、日本爪肌美容検定協会代表の川上愛子さん。川上さんは科学的な視点でスキンケアを研究し、2万人以上を美肌に導いてきた肌育成スペシャリスト。川上さんのもとには、手荒れや、ボコボコと血管が浮き出た自分の手を「おばあちゃんみたい」と悩む人から多くの相談が寄せられるという。
「手の血管が目立つ理由は大きく3つあります。1つ目はコラーゲンやヒアルロン酸、脂肪が減少することで肌がハリを失うこと。2つ目は、加齢とともに血管がしなやかさを失って厚みを増していくこと。40~50代になると肌のハリが失われるのと、血管が太くなっていくことが同時に起きます。そして最後の要因が運動不足です」(川上さん、以下同)
手の甲や腕の血管が浮き出て、視覚的に目立つ状態のことを「ハンドベイン」という。病気ではないので保険適用の治療は受けられないが、その見た目が気になることもあり、一部のクリニックでは自由診療でヒアルロン酸を注射するなどの治療を施すこともある。
「手の血管浮きを解消するためには、全身の血流をよくしてむくみを解消することが大切です。一度失われたコラーゲンやヒアルロン酸は基本的に元に戻りませんが、それ以上失われるのを防ぐことはできます。
そのためにはマッサージが有効。腕のつけ根から脇の下までのリンパ節をもみほぐして、老廃物を流すことから始めます。その後に、手の甲にハンドクリームをつけて、腕のマッサージをします」
1日1回、このケアを習慣づけると、むくみが取れて血管が目立ちにくくなってくるそうだ。
「お風呂上がりのケアを習慣にするのがおすすめです。最低でも1分ほど、イタ気持ちいいと感じるまで何分やってもかまいません」
さっそく、川上さんがすすめている「手の甲の血管浮き」を解消するセルフケアにトライしてみよう。
まずは、(1)腕のつけ根にあるリンパ節を、片方ずつ指で円を描くように柔らかくもみほぐす。痛みを感じたら凝っている証拠。イタ気持ちいいと感じるまでじっくりとほぐそう。続いて脇の下も同様に行い、老廃物を流していく。
次に(2)肘を曲げて耳の横につけるように上げる。3~4回後ろに回して肩甲骨のまわりをほぐす。
「ポイントは肘を耳のほうに近づけること。肩こりの人は腕の血流が滞っていることが多いので、肩甲骨をしっかり動かし、血流を促します。
その後(3)クリームを手の甲に取り、両手の甲を合わせ、肌になじませます。その流れで(4)腕を心臓より高く上げてマッサージします。このとき、皮膚を刺激しすぎるとコラーゲンが失われる原因にもつながりますので、マッサージは力を入れすぎないように行います」
この一連のケアに加え、川上さんがおすすめするのが、手のひらを頭より高い位置に上げて手を握って開いてを繰り返す「グーパー体操」。手の血流が促されるので、テレビのCM中などすき間時間にこまめに行うと、むくみの解消に効果的だという。
手を「老け見え」させないためにも、日ごろの心がけを積み重ねていこう。