大人も重症化リスクが…(写真:IYO/PIXTA) 画像を見る

「この肺炎は、子供から高齢者まで、幅広い世代に感染します。なかでも5歳から15歳以下の子供に感染しやすく、全体の約5割を占めるともいわれています。

 

ただし、子供からの飛沫や接触によって、家庭内感染で大人にうつるケースも多く、65歳以上の高齢者が感染した場合、重症化しやすいので注意が必要です」

 

こう警鐘を鳴らすのは、日本感染症学会専門医で、東京歯科大学市川総合病院呼吸器内科の寺嶋毅教授。全国でインフルエンザが猛威を振るうなか、さらに別の感染症の危険が日本に迫っている。

 

9月以降、中国で“マイコプラズマ肺炎”による呼吸器疾患の患者が急増し、現在も北京などの大都市の医療機関では、病床が不足する事態が続いているという。

 

世界保健機関(WHO)は中国に対し、感染防止策の徹底を呼びかけているが、すでにお隣の韓国でも、“マイコプラズマ肺炎”による入院患者が、この1カ月で2倍以上に増加するなど、世界的な感染拡大も懸念されている。

 

■2~3週間の長い潜伏期間を経て発症

 

“マイコプラズマ肺炎”とは、一体どのような感染症なのか。

 

「肺炎マイコプラズマという病原体によって引き起こされる感染症です。主な症状は発熱、咳、倦怠感など。風邪のような症状にとどまる人から、気管支炎、そして肺炎になる人まで症状には幅があります。成人の場合、基礎疾患がなくても過剰な免疫反応で重症化することがあるので、特に注意が必要です」(寺嶋教授、以下同)

 

“マイコプラズマ肺炎”は、感染してから2~3週間の潜伏期間があるそう。長い潜伏期間を経て突如襲ってくる。また、発症当初は比較的症状が軽く、出歩くことで人にうつしてしまうことが多いことから、“歩く肺炎”と呼ばれている。

 

国立感染症研究所のデータによると、近年“マイコプラズマ肺炎”の国内患者数は、4年に1回、オリンピックが開催される年に増える傾向にあった(ロンドンの2012年、リオデジャネイロの2016年)。

 

2020年に増えなかったのは、より強い感染力を持った“新型コロナ”のパンデミックの影響だといわれている(グラフ参照)。

 

その4年後が、来年2024年なのだが、すでに予兆はあるという。“インフルエンザ”をはじめとする、感染症の罹患者の多さだ。

 

「いま、子供たちを中心に夏に流行するといわれている、アデノウイルスが引き起こす“咽頭結膜熱(プール熱)”、さらに“溶連菌(A群溶血性レンサ球菌咽頭炎)”の感染者が急増しています。

 

今後、中国や韓国のように“マイコプラズマ肺炎”が日本にも広がると、全国の医療機関にも影響が出てくるでしょう。特に発熱外来や小児科の混乱が予想されます」

 

さまざまな感染症の波が押し寄せてきているのはなぜか。寺嶋教授は、コロナ禍の約3年間で、世界中で防疫措置が取られてきた結果、感染症に対する免疫の蓄積が失われてしまったことが原因ではないかと分析している。

 

もし、免疫のない状態で“マイコプラズマ肺炎”の病原体が国内に大量に持ち込まれたら、中国や韓国のように、一気に感染爆発することもありえるという。

 

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