医療費を約1兆円削減できる」として、自公・維新の3党協議により“OTC類似薬の保険外し”が進められている(写真:IYO/PIXTA) 画像を見る

「“OTC類似薬”が保険適用外になると、処方箋は発行されなくなり、病院で診断を受けたのに、『市販薬を薬局で買ってください』と言われかねない事態になります。そうなれば、患者の負担が増えるだけでなく、健康まで損ないかねません」

 

そう警鐘を鳴らすのは、野田阪神駅前いまい皮フ科小児皮フ科アレルギー科院長の今井康友さん。

 

“OCT類似薬”とは、市販薬とほぼ同じ成分だが、医療機関で処方され、保険適用となる薬のこと。約7千種類あるという。

 

ところが現在、「OCT類似薬の一部を保険適用から外すことで、医療費を約1兆円削減できる」として、自公・維新の3党協議により“OCT類似薬の保険外し”が進められているのだ。

 

「維新の会は、保険適用から除外したい28の薬剤名を4月に公表しました。このなかには、アトピー性皮膚炎などに使用するヒルドイドクリーム(ヘパリン類似物質)や、腰痛などで使用する鎮痛剤のロキソニンテープ、花粉症などに効くアレジオン、去痰剤のムコダインなど、おなじみの薬が多数、含まれています」(全国紙記者)

 

こうした動きに対し、日本医師会のほか、開業医や勤務医らが加盟する全国保険医団体連合会などからも、反対の声が上がっている(今国会の合意は断念)。

 

まず、気がかりなのが、患者が窓口で支払う薬代の負担増だ。前出の今井さんは、こう指摘する。

 

「アトピー性皮膚炎の患者などが使用する保湿剤のヘパリン類似物質油性クリームを200g処方した場合、後発薬なら患者が支払う薬代は3割負担で約240円。調剤料等を加えても約630~680円に収まります。

 

ところが、OTC類似薬から除外され、薬局で同様の市販品を200g購入するとなると、5千円以上かかります」(今井さん、以下同)

 

つまり、アトピー性皮膚炎で毎月200g継続使用している場合、年間5万7千円以上の負担増に。

 

同様に、皮膚の炎症やかゆみを抑えるリンデロン軟膏も、今後、除外リストに追加される可能性があるという。

 

「リンデロン軟膏を100g処方した場合、薬代のみなら3割負担で500円程度。薬局での支払いは調剤料含めて3割負担で1千円程度ですが、OTC類似薬から除外されて薬局で購入するとなると、100gで2万円ほどかかることになります」

 

つまり、薬代のみなら約1万9千500円もの負担増に……。

 

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