経済ジャーナリスト・荻原博子さん(写真:本誌写真部) 画像を見る

高齢者を対象としたスマホの購入補助が増えています。

 

たとえば東京都世田谷区では、スマホや充電器の購入費用、アカウントの設定料などのうち最大3万円を補助します。対象は世田谷区に住民登録がある65歳以上の人。補助を受ける条件は、区が指定する店でスマホを購入し、購入当日にスマホ教室の受講と補助の申請を行うことです。東京都公式アプリの新規登録や、東京都と世田谷区の公式LINEの友だち登録なども必要ですが、登録方法などもスマホ教室で教わるそうです。

 

ほかにも東京都杉並区や八王子市、茨城県筑西市などが同様の補助を行っています。補助額は最大3万円が中心ですが、青森県むつ市では最大3万2千円、福岡県田川市では最大2万円、山梨県富士河口湖町では最大1万円などさまざまです。また補助の対象も、福島県川俣町では70歳以上など、自治体によりますが、どの自治体もスマホ教室があるので、安心してチャレンジできるでしょう。

 

■高齢者のスマホ使用率も上がり、60代では94%に

 

NTTドコモ傘下のモバイル社会研究所によると、日本国内のスマホ所有率は2025年1月時点で約98%。スマホを持つことが前提の世の中になりつつあります。

 

高齢者のスマホ所有率もかなり上がってきましたが、同調査によると60代の所有率は94%で、70代は85%。高齢になるほど所有率はやや下がっています。

 

自治体は、災害情報など急を要する重要なお知らせをホームページやスマホアプリなどで発信する機会が増えると考えているのでしょう。高齢者にも情報を早く届けるために、スマホの普及を後押ししたいのだと思います。

 

また、兵庫県姫路市のスマホ補助は、市が提供する「フレイル予防アプリ」内にある「ひめさんポ」を最大1万ポイント=1万円相当の付与で行います。ひめさんポは市独自のポイントで、1日の目標歩数をクリアすれば1ポイントなどが付与されるもの。PayPayなどに交換して買い物に使えます。スマホのフレイル予防アプリで健康を維持してもらい、自治体としては医療費の削減につなげたいのでしょう。

 

高齢者としても、スマホがあると便利です。買い物はネットスーパーで、銀行はネットバンキングで、自宅で手配できます。最初はみんな不安ですが、慣れれば簡単。私はもう、振り込みのために銀行ATMの列に並ぶなど考えられません。

 

さらにSNSなどのコミュニティに参加すれば、一人暮らしでも“孤立”を避けられるでしょう。

 

ただし、ネットに流れる情報は玉石混交ですから、正しい情報を見極めるリテラシーが重要です。情報を漫然と受け取るのではなく、発信元はどこか、根拠や裏付けがあるかなどを考えましょう。これが脳トレにもなると私は思います。

 

茨城県下妻市では補助金が予算の上限に達したため、期限を前倒しして申し込みを締め切りました。スマホ補助金に興味のある人は早めに、自治体にお問い合わせを。

 

【PROFILE】

おぎわらひろこ

家計に優しく寄り添う経済ジャーナリスト。著書に『65歳からは、お金の心配をやめなさい』(PHP新書)、鎌田實氏との共著『お金が貯まる健康習慣』(主婦の友社)など多数

 

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