「もう高市内閣はヘロヘロでした。だって、予算委員長だって野党だし、もう大臣がいくら手を挙げても、私にばかり当たるし」
先の衆議院選挙の応援演説で、こんなふうに愚痴っていたのは高市早苗首相(65)だ。少数与党内閣として始まった高市内閣。国会で「自分ばかり答弁させられる」と高市首相が不満を漏らしていることは以前からたびたび報じられてきた。
一方で、Xではこんな批判も。
《自分ばかりっていうが、総理なんだからあたり前》
《野党時代の自民も同じくらい総理にきいてただろ》
はたして高市首相の答弁回数は多いのか、調べてみた。
■もっとも答弁に立つ割合が高かったのは?
「国会会議録検索システム」を使い、民主党が政権交代後に初めて臨んだ2010年の第174回国会から、今年の総選挙前の第220回国会まで、「予算委員会」における首相の発言回数を調べた。
さらに、大臣や副大臣、官公庁の局長などの官職を含む、同システム上で「肩書き」を有している者を政府側の答弁者と推定(ただし、国会が招聘した証人などは母数から排除せず)。その者たちの発言数を母数として、首相の発言数が占める割合を算出した。下記が、首相の“答弁割合”が高かった国会のベスト5だ。
■5位:第210回(臨時会、2022年10月3日~12月10日)
岸田文雄首相
発言総数 首相発言数 割合
衆議院 857回 / 420回 / 49.01%
参議院1,209回 / 515回 / 42.60%
総数 2,066回 / 935回 / 45.26%
■4位:第203回(臨時会、2020年10月26日~12月5日)
菅義偉首相
発言総数 首相発言数 割合
衆議院 477回 / 245回 / 51.36%
参議院 681回 / 308回 / 45.23%
総数 1,158回 / 553回 / 47.75%
■3位:第212回(臨時会、2023年10月20日~12月13日)
岸田文雄首相
発言総数 首相発言数 割合
衆議院 807回 / 468回 / 57.99%
参議院 1,310回 / 594回 / 45.34%
総数 2,117回 / 1,062回 / 50.17%
■2位:第219回(臨時会、2025年10月21日~12月17日)
高市早苗首相
発言総数 首相発言数 割合
衆議院 841回 / 533回 / 63.38%
参議院 624回 / 212回 / 33.97%
総数 1,465回 / 745回 / 50.85%
■1位:第216回(臨時会、2024年11月28日~12月24日)
石破茂首相
発言総数 首相発言数 割合
衆議院 469回 / 312回 / 66.52%
参議院 699回 / 295回 / 42.20%
総数 1,168回 / 607回 / 51.97%
全答弁に占める首相答弁の割合がもっとも高かったのは、第216回国会の石破茂首相の51.97%。2位が第219回国会の高市早苗首相の50.85%だった。
また、自民党以外でもっとも割合が高かったのは、第175回(臨時会、2010年7月30日~8月6日)の菅直人首相の41.5%(6位)。常会(毎年1月に召集される国会、会期は150日間)でもっとも割合が高かったのは、第213回(2024年1月26日~6月23日)の岸田文雄首相の34.05%(14位)だった。結果を政治部記者に解説してもらった。
「結果を見る限り、『私ばかり』という高市さんの主張には一定の根拠はありそうですね。新年度予算を審議する通常国会(常会)の予算委員会では審議対象が極めて広範囲となるうえ、長期間にわたって開催されるので、首相に質問が集中しづらい。一方、臨時国会(臨時会)は首相が交代したときや、特定の話題があるときに開かれることが多く、比較的短期間の開催になるので、首相に質問が集中する傾向にあります。しかし、その臨時会でも、近年は首相にますます質問が集中する傾向にあるといっていいかもしれません」(前出・政治部記者、以下同)
実際、トップ5は、2020年以降の臨時会だった。
■高市首相は安倍首相路線を選ぶ!?
議席数や“話題”も無関係ではないという。
「質問時間の配分は議席数にかかわらず7~8割が野党というのが慣例で、もともと野党の質問の方が多い。ただ、第216回の国会は、裏金問題で衆院総選挙に大敗し、自民党が大幅に議席数を減らした後の国会です。議席配分から、衆院予算委員会の委員長は立憲民主党から選ばれました。高市さんが新首相として臨んだ第219回もその流れで迎えた国会です。
石破さんは自民党が抱える政治と金の問題で、高市さんは自らの台湾有事発言などで厳しく追及された。委員長が与党議員の場合、質問者が首相を指名しても、他の閣僚が手を挙げた場合は答弁を許すことがあります。しかし、衆院予算委員会での安住淳委員長(64)と枝野幸男委員長(61)は、これを認めず首相に答弁させることが多かった印象です」
実際に、第216回と第219回国会では、衆院での首相答弁が参院に比べて突出して多く、いずれも6割を超えていた。一方、首相の“個性”も答弁機会に関係するという。
「“聞く力”をキャッチフレーズにしていた岸田さんは自ら答弁に立つことを好みました。一方、憲政史上最も長く首相を務めた安倍晋三元首相は自らのスキャンダルの追及時にも閣僚や官僚に答弁を任せることが多かった印象です。高市さんも安倍さん路線でいくのかもしれません。ただ、内閣総理大臣は行政の最高責任者として、重い説明責任を負っています。職責を果たすためにも、十分な答弁の機会を作ることが望ましいでしょう」
『首相答弁が4割減 「ヘロヘロだった」高市内閣、国会で主導権回復』(2月27日『毎日新聞』)
『首相の答弁回数割合45% 昨年の臨時国会から大幅減』(3月4日『読売新聞』)
自民党が大勝したのちの初の国会となる今国会で、高市首相の答弁回数が大きく減っていることがすでに報じられている。
画像ページ >【写真アリ】答弁の割合がもっとも多かった総理はこの人(他2枚)
