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(放射能汚染を再拡散する巨大装置、減容化施設と資材化施設。手前には村民のお墓が)

 

放射能ゴミを燃やす焼却施設から放射性物質が飯舘村に流れる

 

飯舘村南部に位置する蕨平(わらびだいら)地区では、環境省の主導で、「放射能ゴミを再利用しよう」というおそろしい計画が進んでいた。

 

蕨平には昨年、巨大な仮設焼却施設(減容化施設)が完成し、除染で出た落ち葉や枯れ木等の可燃物が燃やされつつあるのだ。

福島県内のいたるところに、いまだ黒い袋に入った除染ゴミが山積みされているが、要は、あの袋の中身を焼却処理し、容積を減らそうというのだ。

 

その量は1日あたり240トン。施設は最長で5年運転した後に解体するそうだが、なんと総工費は400億円とも。しかも、村内だけではなく、周辺自治体6市町の汚染ゴミも運び込み、蕨平で燃やすという。

ゴミは、出た地域で処理するのが原則だが、「飯舘村民が避難してお世話になっているから」(菅野村長)との理由で、広域処理を初めて引き受けた。村外から大型トラックで除染ゴミを運び込むことで交通量が激増し、子供らが交通事故にあったり、舞い上がった粉塵を吸い込んだりするリスクも指摘されている。

 

「焼却したら、放射性物質を含んだ灰が微粒子として、ふたたび環境中にバラまかれてしまいます」と警告するのは、ちくりん舎(NPO法人市民放射能監視センター)の青木一政さんだ。

 

環境省は、焼却炉に設置しているバグフィルターで99.9%放射性物質が除去されると発表しているが、「実際には6~7割程度しか除去できない」とこれまでの研究などから青木さんらは分析する。

夏には、福島第一原発方面から吹く風に乗って、気化した放射性物質が飯舘中学校方面にも流れる。

 

さらに、もっとおそろしいのは、仮設焼却炉に併設してつくられた「仮設資材化施設」。なんとここでは、燃やすことのできない汚染土壌や焼却灰等を、セメントなどの資材に再利用するために、高熱処理の実証実験が行われるのだ。

「原発事故前は、100Bq/kg以上は”放射性廃棄物”としてドラム缶で保管しなければならなかったんです。なのに事故後に基準値が8千Bq/kgに引き上げられ、それを下回ったものは資材として再利用されようとしています。ありえません」(青木さん)

 

放射性物質は、汚染が拡大しないよう「集約する」のが鉄則だ。真逆のことを進める環境省や、それにのっかる飯舘村の菅野村長。大人たちは、学校の帰還を進める前に、子供を危険にさらす要素を少しでも減らす努力をするべきではないか。

 

(取材・文/和田秀子)

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