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「デザイナーの退任騒動が起きている海外の有名ブランドの中には、個人的にお買い物をしているところもいくつかあって、『あ、変わっちゃうんだ』とか『前のほうが好きだったな』なんて残念に思うところもあるのよね〜」

 

そう話すのはファッションプロデューサーの植松晃士さん。彼も嘆くとおり、このところパリやミラノのファッションショーで新作コレクションを発表し、世界中にリッチな顧客を持つ、海外の有名ブランドの“デザイナー人事”がかまびすしい。

 

4月に発表され、ファッション業界を騒然とさせた「サンローラン」のエディ・スリマン退任劇は、その典型例だ。ブランドのイニシャルであるYSLを重ねたロゴマークを、皆さんも一度ならず目にしたことがあるだろう。

 

「4年前のデザイナー就任時に、このロゴを“もうやめる!”と決めたのがエディ。それまで40年近く使われてきた『イヴ・サンローラン』というブランド名から“イヴ”を取り、シンプルに『サンローラン』だけにしたのも、この方。どんなふうに変えていくのかなって、ちょっと楽しみにしていたのは事実よ」

 

ファッション界にさまざまな変革をもたらしただけに、多くの惜しむ声が上がった。そのエディの後任に選ばれたのは、「フェンディ」や「ヴェルサス ヴェルサーチ」で経験を積んだアンソニー・ヴァカレロだった。

 

そのほか、海外有名ブランド・デザイナーの“ドタバタ”退任騒動は次の通りだ。

 

【Dior】

「ディオール」では’12年から3年半の間、デザイナーを務めたラフ・シモンズが突如、辞任。その衝撃の大きさから、海外メディアが速報扱いで取り上げたほど。後任選びについてはさまざまな噂が。

 

【SALVATORE FERRAGAMO】

「サルヴァトーレフェラガモ」は約16年間ブランドに在籍したマッシミリアーノ・ジョルネッティの退任を、この3月に発表。また先月、CEOのミケーレ・ノルサの退任も発表されている。

 

【LANVIN】

「ランバン」は15年間デザイナーを務め、ブランドの再生にも貢献したとされるアルベール・エルパスを、昨年秋に解任。パリ市長も巻き込む騒ぎに。

 

【BALENCIAGA】

「バレンシアガ」は3年前、28歳の若さでデザイナーに就任したアレキサンダー・ワンの退任を、昨年7月に発表。同じく若手のデザイナーを後任に。

 

デザイナーを替えるタイミングで、それまでのものをすべて精算する、いわゆる“クラッシュ&ビルド”を試みるブランドは多いという。なかにはそれまでの客をばっさり切り捨てるほど、大胆な策に打って出るブランドもあるのだとか。

 

せっかく築き上げてきたものを、そうまでして変えなきゃいけない理由とは?植松さんはこう語る。

 

「ブランドもののお洋服を着ている人なんて街でほぼ見ないでしょ?実際に着るのはものすごいお金持ちか、“ファッションマニア”みたいなごく一部の人。大ヒットなんてするわけないじゃない?そんなこともあって有名ブランドの経営者たちは、“商売”になりづらいお洋服より、普通の人にも手にしてもらえるバッグやお財布、靴での売り上げを求めているんじゃないかしら?でもデザイナーたちはファッションショーのランウェイで披露する新作のお洋服で勝負がしたい。そのギャップが確執を生み、デザイナーの退任劇につながっているのかもしれないわね」

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