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今年4月1日から、家庭用電力の小売り自由化が始まる。戦後70年間、日本の家庭用電力は1エリア1電力会社(東京電力など全国10社。以下・略して10電力と呼称)が発電、送電、販売、料金徴収のすべてをほぼ独占してきた。

 

「戦後は発電が不安定で停電も多かった。なにより安定供給を優先してこのような体制が維持されてきたわけです」

 

こう話すのは、電力システムにくわしい一橋大学商学研究科教授・山内弘隆さん。だが今回の電力自由化といっても発電所から家庭までの発送電の仕組みはまったく変わらない。発電、送電のシステム自体は10電力がそのまま引き継ぐ。変わるのは10電力と平行してほかの企業も電気を販売、料金徴収できるようになることだ。また、電力料金もこれまでの政府認可制から、各社が自由に設定できるようになる。

 

家庭の電力消費にくわしい消費生活アドバイザーの和田由貴さんは、こう語る。

 

「10電力と並行して電気を売る代理店がたくさんできると考えるとわかりやすい。各社が参入することで競争が生まれ、料金が少しでも安くなればいいことだと思います」

 

そんな電力自由化にまつわる疑問について、専門家に聞いた。

 

【Q】本当に電気料金は安くなる? 

電気は薄利多売で利益率の低い商品といわれる。にもかかわらず新電力会社各社が現在の電力料金に比べ5%前後(標準世帯で年間5千円程度)の値下げプランを打ち出している。どうしてこんなことが可能なの?

 

◯スマートメーター(新型デジタル電気メーター)の導入で検針コストが大幅カット

「新電力会社と契約するには現在の電気メーターをスマートメーターに交換が必要(手続きは各小売り会社が行い、メーター交換は10電力が担当し無料で交換)。このメーターのおかげで各社は契約家庭の使用量をオフィスにいながら把握できます。人が検針に回ることがなくなり、大幅にコストカット。このカット分を値下げできるはず」(和田さん)

 

◯総合エネルギー会社に成長するための投資

「東京ガスなどガス会社、東燃ゼネラル石油などの石油会社は電気、ガス、石油をすべて一括で販売する総合エネルギー会社を目指しています。来年4月からは都市ガスの小売り自由化も決定。10電力はガスも売る予定で各社生き残りをかけたすさまじい競争に。その第一陣として電力の顧客を取り込みたい。電力料金で儲けるより囲い込み戦略。それゆえ他社より安く、が至上命令なんです」(和田さん)

 

◯異業種への囲い込み

電力で儲けるのではなく顧客の囲い込みのため参入する企業はほかにも。スーパーで契約ができるスマ電、携帯会社のソフトバンク、au、旅行会社のH.I.S.などがそれだ。

 

「携帯はいまや乗り換えが簡単に。顧客を囲い込むために一度契約すると変更がおっくうになりがちな電力市場に乗り出しました」(和田さん)

 

【Q】もし新電力会社に替えるならいつがお得? 

とりあえず新電力の顔ぶれが出そろうまで待つか、新規参入各社が顧客取り込みに必死ないま早期契約キャンペーンに乗るのがいいか、専門家の意見も分かれている。

 

「一度契約すると一定期間解約違約金が発生するプラン(携帯電話契約の2年しばりのようなもの)も多い。これからもっとお得な会社が参入してくる可能性もあるので、いま安いからと飛び付くと後悔することも考えられる。とくに解約違約金の有無は確認が大切です」(山内さん)

 

「私も解約違約金が発生するプランは慎重に検討すべきだと思っています。ただ東急電鉄さんの東急でんきは新規契約件数1万件を超えたことを発表。安い新電力会社に乗り換えたいという人は多いはず。メーター工期待ちの時間もありますから、なるべく早く移行したいというのであれば、すぐにでも契約することをお勧めします」(和田さん)

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