「先生助けて…」兵庫の病床逼迫で町のクリニックに患者殺到
画像を見る 医療崩壊危機に直面する兵庫県の井戸敏三知事(写真:時事通信)

 

■涙を流しながら「先生、助けてください…」

 

取材中も患者からの電話が鳴り響き、対応に追われていた。それでも診療を続ける理由について、長尾さんはこう語る。

 

「熱があって苦しいのに、保健所のスタッフにも救急隊にもかかりつけのお医者さんにも受け入れを拒否されている。そんな引き取り手のない人たちが増えています。彼らが、私に涙を流しながら言うんです。『先生、何とかしてください。助けてください』と。そうしたら、もう診ざるをえないじゃないですか……」

 

これまで最前線でコロナと闘い続けてきた長尾さんは、今後の必要なことについて語る。

 

「私は“地域包括ケア”で立ち向かうべきだと主張してきました。

 

コロナで重要なのは“早期診断”と“早期治療”です。まず地域のかかりつけ医が患者を診断し、感染が判明すればすぐに治療を開始。酸素飽和度が93%以下なら、酸素も投入します。在宅医療で対応しながら入院を待つ。そのなかで重症になりそうな患者さんをピックアップして、保健所に連絡するのです。

 

私は400人以上のコロナ患者を診断し、100名の自宅療養者を管理してきました。しかし、看取りはゼロです。

 

今の保健所を中心としたやり方は、もう破綻寸前です。だから、私たち医師会と保健所のネットワークを強化して対処していく。そういう大胆な転換が必要な時期にさしかかっているのではないでしょうか」

 

深刻な医療崩壊現場の実態。地域で一丸となって乗り越えることができるのだろうか。

 

「女性自身」2021年5月25日号 掲載

【関連画像】

関連カテゴリー: